今回ご紹介するのは、「希望の園」(三重・松阪市)の内山.Kさんの作品です。
キュレーターは、福祉実験ユニット・ヘラルボニーの松田 文登さんです。

キュレーターより 《松田 文登さん》

100種類以上の0.5ミリペンで描かれる「〇〇の地図」
内山.K「メロンの地図」

敷き詰められた色彩の中に見え隠れする動物たち。尻尾を捕まえてやろうと息を巻くほどに、私たちは出口を見失って迷子になってしまう。ここはまるで、極彩色の迷宮。都会の伏魔殿。甘い蜜に誘われて、どこまでもこの絵の中を歩き続ける。

冒頭の絵は、三重県松阪市の「希望の園」に在籍する作家、内山.Kさんの作品だ。100種類以上の0.5ミリペンで描かれる「〇〇の地図」シリーズは、ラメペンで描き込まれた箇所がキラキラと輝き、秘密の宝地図のようでもある。作品に下書きという概念は存在せず、まるで細胞が増殖するように動物、昆虫、数字、時には「鬼」をもモチーフに数珠つなぎで描いていく。そのあまりの緻密(ちみつ)さに思わずため息が漏れてしまう。

内山.Kさんの作品は、三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン(東京・丸の内)で開催されたヘラルボニーの展覧会「ART IN YOU アートはあなたの中にある」(会期:2023年5月20日〜2023年6月17日※現在は終了)にて展示された。展覧会の初日には作家本人による公開アート制作が行われ、大勢の観衆の渦の中心で黙々とペンを走らせる内山さんの姿がそこにはあった。普段は人見知りで寡黙な彼だが、作品紹介を振られると普段の姿からは信じられないほど溌溂(はつらつ)と語り出し、それがなんとも愛らしい光景だった。

最近の内山さんの作品はこれまでのカラフルな作風からダークな色づかいに変化しているという。内山さんの地図がこれからどのような変貌を遂げていくのか、楽しみでしょうがない。

プロフィール

内山.K(K Uchiyama)
1994年生まれ。伊勢市在住。2011年から毎年、東京でのグループ展に出品。その他展覧会にも多数出品している。

【受賞歴】
2015年 第62回伊勢市美術展覧会 洋画部門「岡田文化財団賞」
2016年 第63回伊勢市美術展覧会 洋画部門「奨励賞」
2018年 第69回みえ県展 洋画部門「優秀賞」
2019年 第66回伊勢市美術展覧会 平面造形の部「市議会議長賞」
2020年 トヨハシブリュット・アートコンテスト「副知事賞」


プロフィール

松田 文登(まつだ・ふみと)

株式会社ヘラルボニー代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大手ゼネコンで被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共に、へラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネージメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

 


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