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わかばなかま

支援団体の活動リポート

スマイルパソコンボランティアサークル「就労訓練やリハビリに、リサイクルパソコンを活用しています」

東京都大田区の「スマイルパソコンボランティアサークル」は、障害のある人を対象としたパソコン講習会を開催しています。就労に向けてスキルアップを目指す人や、リハビリとしてパソコンの操作を学習する人を支援しています。
第23回「わかば基金」でリサイクルパソコン3台の支援を受け、講習会に新たな受講者を迎えることができました。 画像:パソコン講習会のようす

機能応用訓練の卒業生がサークルを設立

画像:会場の設営の様子 「スマイルパソコンボランティアサークル」(以下、スマイル)は、大田区が障害者の機能応用訓練プログラムとして開催していたパソコン教室の卒業生のための場として、平成21年3月に誕生しました。
パソコン教室を卒業した後、外出するきっかけを失くして引きこもってしまう人もいるのではないかと心配した当時の区の職員の応援を受けて、卒業生の福田 容子さんとパソコン講師の天沼 明美さんがサークルを立ち上げました。

スマイルは現在、区内3か所でパソコン講習会を行っています。対象は、障害者手帳を持っている人で、精神障害や高次脳機能障害、脳血管障害による手足のまひがある人などが受講しています。出欠状況は、その日の天気や参加者の体調によって変わりますが、登録者の数は70人近くにのぼっています。

受講者ひとりひとりに応じてサポート

画像:講習会で使う資料 4月に大田区上池台障害者福祉会館で行われた講習会を訪ねました。
この日の受講者は15人。受講者は、障害も、年齢も、パソコンの経験もさまざまです。学習する内容は、パソコンインストラクターの資格をもつ天沼さんが考えています。難易度別やソフトのバージョン別に、何通りも丁寧に操作手順を記した資料を用意しています。スマイルのスタッフたちは、受講生の隣に寄り添ってアドバイスをしたり、一緒に考えたりと、受講者それぞれのペースにあわせて学習をサポートします。

画像:ペンタブレットを使った入力の様子

パソコンは、区が所有するノートパソコンを借用し、足りない分はスタッフが自分のものを持ち込んで、受講者にあわせて準備します。
例えば、高次脳機能障害のため読み書きに困難のあるNさんには、ペンタブレットを用意しています。資料に書かれた文章を読んだり、自分が考えたことをローマ字やかなでキーボード入力するのは難しいのですが、ペンタブレットなら直接ペンで書いて入力できるので、文章を作るのが格段に早く正確になったそうです。また、手にまひがあってマウスをうまく操作できない人には、マウスを使わなくてもテンキーで代用できるように設定しています。

スマイルの講習会は受講期間を設けていないので好きなだけ受講を続けられますが、パソコンの数が足りないため、希望者はいるのに受講者をなかなか増やすことができずにいました。使用できるパソコンの台数を増やすため、学習の成果があがった人をサポーターに“昇格”したり、バザーを開いたり自主製品を販売して収入を増やす努力をするなか、第23回「わかば基金」のリサイクルパソコン部門に申請し、支援が決まりました。

講習会は学びの場、リハビリ、大切な居場所

画像:サポーターが丁寧に指導する様子 3台のリサイクルパソコンの寄贈を受けて、スマイルは新たな受講者を2人受け入れることができました。
区のパソコンは、ウイルス感染を防ぐために保存媒体の使用が禁止されていて、インターネットの利用にも制限があるため、「『わかば基金』でいただいたパソコンなら、学習したことをUSBメモリなどに保存して自宅で続きの作業ができますし、インターネットで画像を取り込んで学習に利用することもできるようになりました」と講師の天沼さんは言います。リサイクルパソコンは、学習の幅を広げるのにも役立てられています。

昨年度、受講者の中から2名が就職を果たしました。
講習会を訪問した日、そのうちのお1人のYさんが、休暇をとって講習に来ていました。
「交通事故で高次脳機能障害が残って、前はできていた操作ができないんですよ・・・でも翌週やってみると思い出したり。定期的に学べたのがありがたかったです」と話していました。
画像:受講者どうしで教えあう様子 かつては受講する側で、今はサポート役となった福田さんは、受講者の就職を自分のことのように喜んでいます。「リハビリだったり、サロン的な場所だったり・・・パソコン講習会ですが、受講者にとっていろんな意味がある場になっていると感じています。受講者が徐々に障害を受け入れるにつれて、パソコンへの意欲やスキルも少しずつ高くなっていくのをそばで見ているので、就職ができたという報告はとても嬉しいです」と話していました。

例えば、パソコン操作の分からないことを質問してやりとりをすることが、言語障害のある人のコミュニケーションの向上につながる。家にこもりがちだった人が、定期的に通ううちに日常生活にメリハリがつく。学習の成果をあげた受講者が、サポートする側にまわることで人の役にたつ喜びを見出す・・・。
スマイルの講習会は、障害がある人の生活を豊かにすることにも一役買っているようです。

(2012年5月7日記)

スマイルパソコンボランティアサークルは、第23回(平成23年度)第2部門の支援グループです。
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