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知っていますか?LGBT〜虹の世界への鍵あります〜(2)

「カミングアウト」という壁 〜当事者とその家族をめぐって〜

講師:小林 りょう子さん LGBTの家族と友人をつなぐ会・東京世話人 講師:杉山 文野さん ハートをつなごう学校代表

当事者が抱える重いテーマのひとつに「カミングアウト」の問題があります。カミングアウトを受けた親は、親族や周囲への負い目から「自分の育て方の問題」に原因を見つけようとします。
そして、カミングアウトしようとする側は、「親に辛い想いをさせたくない」と考え、性的マイノリティーである事をひとりで背負っている人も少なくないのが現状です。
杉山文野さんは、メディアや各地での講演会で性的マイノリティーの認知度を広める活動を行っている性同一性障害当事者。今では「ボク、元女子高生です」と笑いを取り、颯爽としていますが、そこに至るまでには自分との、家族との、社会との葛藤がありました。
一方、小林りょう子さんは、10年ほど前に子どもから「性同一性障害である」とカミングアウトを受けました。今ではその子も女性から男性への戸籍変更を終え、結婚もして、生き生きとした生活を営んでいます。今ではカミングアウトを受けた親の「駆け込み寺」ともいえる会の活動もされています。
子供の立場、親の立場からいちばん大切な「家族問題」を語ってもらいます。

杉山さんは「カミングアウトは点ではなく、線」といいます。

杉山さん自身の最初の家族へのカミングアウトは、自分から伝えたというよりも、親に知られてしまったものだったそうです。中学生のとき、同級生の女子と仲良くしているところ、母親に見られてしまったのです。これが結果として最初の「カミングアウト」になったそうです。
その時から、杉山さんと家族との間には見えない壁ができてしまい、お互い気まずい思いを抱きながら月日は流れていったそうです。もともと仲の良い家族だったのにどうしてこんなことになってしまったのか。杉山さんは悩み、このままではいけないと、高校3年生のとき、意を決して家族に言葉で伝えました。しかし、家族からはまったく理解してもらえなかったそうです。

親には自分のことを理解してもらいたいと願っていた杉山さんは、まず「分からないことを分かろう」と考えたそうです。 「カミングアウトする側はこれまで生きてきた中で、ずっと自分と向きあって考えぬいてきたこと。でも伝えられる側は初めてのことでゼロからのスタート。1回伝えただけで分かってもらうのは無理なんです。僕自身、父親のことを分かっているのかと思ったとき、全然分かってなかったんです。だから、辛くても時間をかけて何度も伝え、少しずつ分かってもらうしかないと思ったんです」。
そして、杉山さんは折を見て何度も伝えていったそうです。すると、家族も性同一性障害に関して書かれた本を読んだり、少しずつ理解しようとしてくれ、いまでは、以前以上に仲の良い家族に戻ったそうです。

一方、カミングアウトをされた小林さんの場合はどうだったのでしょうか。
小林さんはカミングアウトされたとき、「分かった」といったそうです。でも本当に「分かった」訳ではなく、頭の中は???だらけ。まったく訳が分からなかったそうです。でも次にはこう伝えたそうです。「あなたは家族みんなが大切に思い、愛情いっぱいに育てた私たちの子どもに変わりはない。昨日まで女だったのに、今日男になったとしたって、私の子どもには変わりないから大丈夫」と。

受け入れられたのは、家族同士の関係性を深めていたからだともいいます。
「つなぐ会の活動でもカミングアウトの相談をよく受けるんです。そういうときにはいつも家族との良好な関係性を深めてと伝えています。家族との関係が悪かったら、いきなり『分かってくれよ』と言われたって、受け入れられないのは当然じゃないですか。だからこそ家族との日ごろからのコミュニケーションが大事なんです」。

杉山さんも小林さんも、カミングアウトは当事者だけの問題ではなく、受け止める側の問題でもあり、お互いの歩み寄りが不可欠だといいます。

杉山さんから周囲のできることとして、「ウエルカミングアウト」という提案がありました。
「これは周囲がLGBTに対して『ウエルカムなんですよ』って伝えることです。これがすごく大事だと思うんです。例えば『今日LGBTについての話を聞いた』とか『テレビで同性婚の話をやっていた』とかいう話題を肯定的に、職場や友だち、家族なんかに言ってみる。すると、すぐ隣にいるであろう、でもまだカミングアウトしていない当事者たちが、『この人にだったら言えるかもしれない』と思うきっかけになるんです。ぜひこういうふうに言っていただくところから始めてみてもらえるといいなと思います」。

参加者の皆さんからは、「お二人の話を聞いて勇気をいただきました。カミングアウトのハードルが下がったように感じます」、「カミングアウトをするかしないか迷わないでもよい時代が来るといいなと思いました」といった感想が寄せられました。

日時
11月13日(木曜日) 18:30〜20:00
会場
渋谷区勤労福祉会館 2階 第二会議室
東京都渋谷区神南1-19-8[地図をみる
定員
50名 ※定員に達し次第締め切らせていただきます
参加費
無料
その他
  • お申し込みを受け付けた方には自動返信メールを送ります。それをもって受付完了とさせていただきます。
  • 登壇者に1時間程度お話をしていただいた後、30分程度、皆さまの意見・感想を交換できる時間を設ける予定です。
  • 会場内の撮影、録音はご遠慮ください。
主催
NHK厚生文化事業団