会社や学校帰りにお茶を飲みながら、現代社会が抱える様々な福祉の問題について考えてみませんか?

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“福祉のすきま”を仕事にする(4)

児童養護施設の子どもの自立を支援する

講師:林 恵子さん NPO法人ブリッジフォースマイル 代表

TVドラマ「明日、ママがいない」でも取り上げられ、大きな社会問題となった児童養護施設。現在およそ3万人の子どもたちが施設で暮らしています。
2004年に設立された「ブリッジフォースマイル」代表の林さんは「児童養護施設の問題は私たちから見えないことが大きな問題」といいます。支援したいと考える人はいるけど、本当に必要な支援ではなかったり、施設を出てしまうと卒業生たちの支援は全く無くなってしまうのに支援の必要性が見えづらいことなどなど・・・。
中でも林さんは、児童養護施設を巣立つ若者たちへの支援が必要と考えて、自立生活を応援するための寄付物品のマッチングや、若者たち一人一人の夢を応援するサポーター集めなどに取り組んでいます。
児童養護施設が抱える問題、そして現状と課題について聞き、私たちができることを考えます。

開催の報告

林さんが児童養護施設に初めて関心を持ったのは11年前のことです。当時、人材派遣会社で働いていた林さんはキャリアアップを目指してビジネス研修に参加。そこで出された「企業が児童養護施設にできることを考える」という課題がきっかけでした。林さんにとってそれまで児童養護施設は名前を聞いたことがある程度。実態はまるで分からなかったため、いつくもの施設を訪ねて取材を重ねたと言います。
「親がいない子が暮らす場所だと思っていたら、そういった子は全体の1割弱。ほとんどの子どもは虐待や経済的な理由でした。また、ランドセルや学習用具、おもちゃなどには事欠くことがなかったり、高校生には個室が与えられていたり。物質的には生活に困ってはいないんです」。

例えば、子どもたちのためにと考える企業や寄付者などから施設にランドセルや衣服などが贈られることがよくあるそうですが、施設にとっては、もうすでにあるものばかりで、使い道がないという場合も多いそうです。施設のことを知らずに想像していたのと実態は大きく異なっていたそうです。

林さんが施設の実態の中で一番衝撃を受けたのは、子どもたちは高校卒業と同時に施設を出なくてはいけないということでした。さらに、その後の支援はほとんどないというのです。そのため、せっかく自立した生活を始めても、仕事や進学した学校を辞めてしまうと孤立してしまいやすく、生活が困窮しホームレスになったり、犯罪に手を染めてしまうことが少なくないそうです。
施設で暮らす子どもたちは、そういった前例を多く見聞きし、「どうせ自分なんて」と自尊感情が低くなり、将来にも希望が持てなくなってしまうそうです。

林さんは、そういった子どもたちの不安や希望の格差を解消することができればと、2004年にブリッジフォースマイルを設立。子どもたちの巣立ちを支援する活動を始めたのです。
取り組みは多岐に渡ります。引っ越しの手続きや金銭管理など一人暮らしに役立つ情報を掲載したハンドブックの作成、企業とタイアップして行う一人暮らしに欠かせない生活必需品のプレゼント、マンツーマンで生活のことや仕事や学業の悩みなどを相談できるサポートスタッフの派遣、子どもたちの「夢」を応援したいという協力者から資金を募る奨学金など。

林さんは、一人ひとり違う支援によって、それぞれが自立した生活を送れるようになれば、それがいま施設に暮らす子どもたちにとって身近なロールモデルになり、希望にもつながると考えています。
「一緒に先生に叱られたり、だらしなかった先輩が、今では自立した生活をしながら、仕事をし、進学をし、夢を実現させている。そんな姿を見てもらうことで、子どもたちが『自分にも出来るかもしれない』って思えるんじゃないかなと考えたんです。それは、年の離れた社長さんとかスポーツ選手とかが慰問に来て『お前たちも頑張れ!』っていう励ましより、よっぽど説得力があるんじゃないかなと思うんです」。

林さんたちが活動をはじめて10年。これまで関わった子どもたちは600人に上ります。しかし、いまでも「答え」はないといいます。
「子どもたちのためと頑張っても、連絡の取れなくなってしまう子もいます。また、子どもたちの可能性を信じて手を差しのべないことも必要なのですが、どこまでがその範囲なのか。私たちの活動がどこまで役に立っているのか。いまでも正直わからないです。けれども、『おかげで教師になれました』と感謝の声を届けてくれる子、『なんとかやっていけそう』と自信を取り戻してくれる子。成果は見えにくいですが、やめることはできないです」。

参加した皆さんからは、「施設・子どもと社会をつなぐという発想が目からうろこだった。とても参考になった」、「自分自身の心得としても“適切な支援を与えられる” 支援者が必要だと分かった」などの感想が寄せられました。

日時
7月31日(木曜日) 18:30〜20:00
会場
渋谷区勤労福祉会館 2階 第一会議室
東京都渋谷区神南1-19-8[地図をみる
定員
50名 ※定員に達し次第締め切らせていただきます
参加費
無料
その他
  • お申し込みを受け付けた方には自動返信メールを送ります。それをもって受付完了とさせていただきます。
  • 登壇者に1時間程度お話をしていただいた後、30分程度、皆さまの意見・感想を交換できる時間を設ける予定です。
  • 会場内の撮影、録音はご遠慮ください。
主催
NHK厚生文化事業団