“福祉のすきま”を仕事にする(3)
高齢者虐待問題を解決したい
講師:川内 潤さん となりのかいご 代表
現在、介護をしながら働いている人は全国で291万人。介護と仕事の両立が難しく仕事を辞める人も年間10万人に上ります。
川内さんは大学卒業後、介護職として働くなかで、家庭での高齢者虐待の実態を目の当たりにしてきました。そして、親のために、と会社を辞めて介護に一生懸命になる人ほど虐待に結びつきやすいことに気付いたといいます。親とのことに悩む人が相談に来るころにはすでに問題が表面化していることも多く、川内さんは介護に伴う虐待を防ぐには、「とにかく仕事を辞めてはいけない」と伝えることだと考えました。そして「となりのかいご」を立ち上げ、企業でのセミナー活動や相談を始めました。
40〜50代の介護の当事者ばかりでない、20代、30代の反応も大きいという川内さんの取り組みから高齢者虐待を防ぐことについて話し合います。
開催の報告
「虐待を受けている認知症の人は、周囲の人のちょっとした動作にも体を強ばらせるんです。そして人を見つめる目は怯えているんです」。
虐待被害者の多くが同じような状態だと川内さんはいいます。
『こんな状態になる前になんとかしたい』と常に考えていた川内さんは、2012年から企業で働く人たちに向けて、介護に使える制度や施設などの情報を伝える活動を始めたのです。
でもなぜ、虐待防止に情報提供なのか。川内さんはいいます。「親や伴侶が認知症になり介護が必要になったとき、情報がなく仕事を辞めてしまう人ほど、虐待をしてしまう傾向があるんです。虐待を未然に防ぐには、情報を得て、介護はプロに任せることが必要なんです」。
統計によると、家庭での介護者の7割は女性が担っているそうです。しかし、虐待をしてしまうのは息子が4割、夫が2割と、男性が多くを占めているそうです。親一人子一人の家庭や夫婦だけだと、家族の介護が必要になったとき、仕事を辞めて介護するという選択しかできなくなってしまうそうです。そして懸命に尽くそうすればするほど、うまくいかないことにいらだち、おまけに経済的にも苦しくなっていく状況が、ますますイライラを募らせていくのです。それが、虐待を生む大きな要因なるのだそうです。
そうなってしまう前に、こちら側から積極的に情報を提供して、外部のサービスと繋がってもらうことが本当に重要だと川内さんはいいます。
さらに、情報を得るだけでなく、制度を正しく理解することも必要といいます。
例えば介護休業制度。93日間の休暇を取れる制度ですが、この期間だけで介護が終わるはずもありません。この制度は、休暇中に様々な制度を試して、家族でなくても介護ができる状況を作るためのものなのだそうです。しかし、多くの企業では正しく理解されていないそうです。さらに、休暇中も雇用保険から給与の40%(上限17万円)が支給されるのですが、ほとんど知られていないのが現実なのだそうです。
川内さんは「専門家だからこそ分かることや出来ることは任せるべきです。家族にしかできないことは愛情を注ぐこと。そのためにも、仕事を続け、自分のやりたいことを放棄しないことが、家族同士が傷つけずに済む方法です」と話しました。
参加した皆さんからは、「他人事ではないと感じた」、「親に介護が必要になったらどうすればよいのか漠然とした不安があったが、なんとかできる道もあることが分かった」などの感想が寄せられました。
- 日時
- 7月24日(木曜日) 18:30〜20:00
- 会場
- 渋谷区勤労福祉会館 2階 第二会議室
東京都渋谷区神南1-19-8[地図をみる] - 定員
- 50名 ※定員に達し次第締め切らせていただきます
- 参加費
- 無料
- その他
- お申し込みを受け付けた方には自動返信メールを送ります。それをもって受付完了とさせていただきます。
- 登壇者に1時間程度お話をしていただいた後、30分程度、皆さまの意見・感想を交換できる時間を設ける予定です。
- 会場内の撮影、録音はご遠慮ください。
- 主催
- NHK厚生文化事業団