NHK厚生文化事業団 平成25年度事業報告書

目次

はじめに

平成25年度も事業の柱の一つに「東日本大震災の復興支援」を掲げました。
東北の各地では多くの福祉グループが今も懸命に活動を続けています。
しかし、資金が足りない中で、ぎりぎりのやりくりをしながら活動しているグループも少なくありません。そこで、「わかば基金」の中に「東日本大震災被災地支援金部門」を設け、これらのグループを支援する活動を継続しました。また、障害者の福祉施設や高齢者の多い地域が津波や原発事故の被害にあった時、命をどのように守ったか、被災地の人たちの体験を聞いてもらい、いざという時に役立ててもらう取り組みもしました。
福祉に関する関心の対象は、時代とともに変化し多様化しています。このうち発達障害については、最新情報の提供を希望する意見が数多く寄せられていることから、新たな現場の取り組みや専門家の解説などを盛り込んだDVD教材を作成しました。
一方、効果のあるがん治療が普及するのに伴って、がん治療をしながら就労を続けるケースが増えているため、支援のあり方を紹介するフォーラムを開きました。また、高次脳機能障害の人の退院後のリハビリを紹介するフォーラムも開催しました。このように様々なテーマで、25年度はフォーラムを38回行いました。このうちの一部はテレビ放送などで紹介しています。
NHKの福祉番組や事業団制作の福祉教材を貸し出す「福祉ビデオライブラリー」は、520番組が貸し出しの対象となり、5900本余りの利用がありました。障害のある方やそのご家族などが体験を綴る「NHK障害福祉賞」や、高齢社会をテーマに小説を募集している「NHK銀の雫文芸賞」にはたくさんの応募がありました。
このようにNHK厚生文化事業団は25年度、NHKのテレビやラジオの放送と連携し、またNHKグループの協力も頂いて多様な福祉事業を実施することが出来ました。

東日本大震災からの復興を支援する事業の実施

地域の福祉団体を応援する「わかば基金」では、東日本大震災の被災者支援や復興のために地道に活動するグループへの支援に力を注ぎました。また大震災の時の福祉現場の体験を検証し、災害時における障害者や高齢者への支援のあり方を考えるフォーラムを開きました。

発達障害や精神疾患など、多様化するニーズにこたえる障害者福祉事業

「発達障害」に関しては最新の情報を盛り込んだ福祉DVD教材を作成したほか、学齢期の支援や就業支援など関心の高いテーマのフォーラムを全国7か所で実施しました。また、このほか「うつ病」や「躁うつ病」「がん」「脳損傷のリハビリ」など多様な福祉ニーズにこたえるフォーラムを行いました。

認知症など高齢者福祉に関する啓発事業

全国で高齢者の健康や生き方についてイベントを行ったほか、大きな社会問題となっている認知症については、13か所でフォーラムを実施し、7,500人あまりの参加がありました。またNHKの地域放送でその内容を放送するなど、多角的な情報提供を行いました。

きめ細かい福祉情報の提供

「福祉ビデオライブラリー」では「うつ病」「認知症」など事業団制作教材の貸出数が大幅に増加しました。またホームページでフォーラムや福祉イベントの内容をわかりやすい記事にし、参加できなかった人たちへ情報を届けることにも努めました。

目次に戻る

1.東日本大震災の復興を支援する事業

(1)「わかば基金」や「歌謡チャリティーコンサート」で東日本大震災被災地の福祉グループを支援

地域福祉を支援する「わかば基金」に、特別部門として設けている「東日本大震災被災地支援部門」で、24年度に続き、被災地で地域福祉に取り組んでいるグループの活動や、新たな事業を行うための支援を実施した。57グループから申請があり、前年より6団体多い14グループに支援金を贈った。「わかば基金で震災復興に役立ててほしい」という個人寄付が寄せられたことによる。 支援先は、被災地の小学校等で子どもたちに本の読み聞かせをするグループ、仮設住宅に住む人の健康維持のため足もみボランティアをしているグループ、高齢者へ弁当を配布しながら安否確認や見守り活動をするグループ、原発事故で放射線量が高く外で遊ぶことが少なくなった子どもたちのために保養キャンプを行っているグループなどである。6.(1)参照
また「歌謡チャリティーコンサート」を盛岡市で行い、その収益で岩手県内の被災した施設などに車いす付介護浴槽を贈った。盛岡市は2011年の春にコンサートを実施する計画だったが震災のため中止になった経緯がある。今回贈呈した高齢者施設には、津波で全壊し多くの利用者が亡くなった所もあり、再建にあわせて浴槽を導入できたと喜ばれている。6.(4)参照

目次に戻る

(2)福祉現場の被災体験に学ぶ・フォーラムを実施

24年度に続き「震災と福祉」を考えるフォーラムを行った。東日本大震災の時、施設や地域に住む障害者・高齢者はどう避難し何が生死を分けたのか。いざというときの準備は活かされたのか。被災後、支援する側にとってネックとなったのは何か。被災経験から何を学び、何を準備すればいいのか報告と提起をした。 開催地の大阪市は阪神大震災を経験し、東南海地震などの被害も予想される地域のため、障害者施設やボランティア団体の人、行政関係者、学生などが熱心に討論に聞き入った。

目次に戻る

(3)"明日へ"のテーマ曲「花は咲く」による収益チャリティーなど

今年度も東日本大震災プロジェクトの復興支援ソング「花は咲く」の楽曲著作権料など8,142万円を義援金として被災地へおくった。
また、東北で被災した福祉作業所が作った菓子や名産品の販売会を春のイベント「渋谷DEどーも」や、年末の障害者週間に東京の放送センターで行った。当事者からは障害者の働く場の確保につながるものとして感謝された。

目次に戻る

2.障害者福祉事業

(1)こどもの発達相談会および療育キャンプ

大阪、名古屋、福岡において、ことばや発達の遅れた子どもとその親のための相談会を行った。また名古屋では、親と子の療育キャンプ「やまびこキャンプ」を実施した。

こどもの発達相談会

大阪、名古屋、福岡で16回実施した。知的や言語の発達のおくれ、自閉症、LD(学習障害)やADHD(注意欠如多動性障害)の子どもの相談が多かった。

親と子の療育キャンプ

第30回「やまびこキャンプ」を愛知県旭高原で実施した。愛知教育大学とそのOBたちの協力により、発達障害のある子どもたち18人が、自然の中で集団生活を体験した。家族やボランティアなども87人参加した。

目次に戻る

(2)肢体不自由児・者の療育活動

肢体不自由児・者の療育キャンプを、支援団体との共催・協力により、各地で実施した。夏季、冬季の野外活動を通じて、参加者の自立と社会参加を促進し、あわせて交流の輪を広げた。

目次に戻る

(3)NHKハートフォーラム(発達障害)

自閉症やLD(学習障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)などについて、NHKの地域放送局や「親の会」などと共催し、NHKハートフォーラムを7回開催した。
25年度は、関心の高い「学齢期の教育支援」や「就労」をめぐる問題を数多くとりあげた。保護者のほか、特別支援教育を推進する教員や、行政関係者も多数参加した。

目次に戻る

(4)精神疾患に関するNHKハートフォーラム

多くの世代にとって身近な病気となっている精神疾患について最新情報を提供し、支援のあり方を考えるフォーラムを全国で行った。

NHKハートフォーラム(うつ病)、フォーラム(うつ病と躁うつ病)

うつ病や躁うつ病は、誰もが発症する可能性のある身近な病気。うつ病については事業団が新たに制作したDVD教材「うつ病」の映像を使いながらケアや社会復帰についての最新情報を伝えた。また、うつ病と躁うつ病の違いや早期受診の大切さなど、医療情報を伝えるフォーラムも行った。

NHKでの放送

目次に戻る

(5)そのほかのNHKハートフォーラム(障害者福祉など)

NHKハートフォーラム(がんと就労)

働く世代ががんにかかると職を失ったりし、大きな不安を抱えてしまうことが多い。医療が進歩する中、がんになった人はどのように考えて仕事を続けていけばよいのか、またどんなサポートが必要なのか、医療や社会からどんな支援が受けられるのかを伝えた。
会場では事業団が作成した「緩和ケア」の冊子も配布し、不安に苦しむ患者やその家族に情報を提供した。

NHKハートフォーラム(脳損傷のリハビリ)

事業団が作成した「高次脳機能障害」についての福祉DVD教材の素材を使いながら、事故や病気で脳損傷を負った人の入院中の訓練や退院後のリハビリなどを紹介し、後遺症があっても豊かな人生を送るにはどうすれば良いのかを伝えた。

目次に戻る

(6)障害者スポーツイベントの開催

知的障害者のスポーツ大会を東京で実施したほか、障害のある人もない人も一緒になって障害者スポーツを楽しむイベント「ハートスポーツフェスタ」を全国3か所で開催した。

第47回スポーツの集い

重度の障害者が参加できる全国でも数少ないスポーツ大会として、東京都障害者スポーツ協会と協力して開催した。参加者は、100m競争、大玉ころがし、綱引き、リレーなどを楽しんだ。

NHKハートスポーツフェスタ

目次に戻る

(7)障害者や福祉への理解を促す事業

障害のある人と子どもたちの交流教室 (新規事業)

NHK障害福祉賞の受賞者が、小学校を訪れて自らの障害や生き方を話すことで、子どもたちに障害について理解を深めてもらう「交流教室」。
14歳の時、四肢麻痺になり言葉が発せなくなった天畠 大輔さんに、自らの体験とコミュニケーションの大切さを、わずかな肘の動きで介助者に意思を伝える独特の「あいうえお話法」で語ってもらった。伝えるのに時間はかかるがユーモアあふれる授業で、子どもたちも独特の話法を体験することで障害について考えるきっかけになったとの感想があった。

福祉施設の手づくり製品や菓子の販売会

NHK放送センターで福祉施設のスイーツや手づくり製品販売会を年間7回開催した。センターで働く人たちに福祉を身近に感じてもらい、障害のある人たちの就労に少しでも役立つことを願い、事業団とNHK共済会が共同で実施した。
5月には2日間「渋谷DEどーも2013」のイベント会場に来た親子づれに販売会を行った。また、12月の障害者週間に「手づくりの心届けます市」を開催し、東日本大震災で被災した福祉施設が作った東北の名産品も販売した。障害のある人も呼び込みや販売を行い、毎回1000人〜2000人ほどの人でにぎわった。
また、福岡放送局内でも年間4回、福祉施設の「まごころ製品」販売会を実施した。

第8回NHK福岡ハートパーク

福岡市で開催した「第8回NHK福岡ハートパーク」では、障害のある人が「夢」をテーマに描いた絵192枚を、大濠公園の街路灯に飾り展示した。

福祉の仕事に興味を持つ若い人に向けたフォーラム

名古屋で、福祉の仕事に興味を持っている学生たちを対象に、愛知県社会福祉協議会、NHK名古屋放送局、中日新聞社との共催で福祉現場の現状と魅力を伝えるフォーラムを開催した。

中学校講談訪問

いじめ防止をテーマにした宝井駿之介さんの講談を中学校で行った。

目次に戻る

(8)第48回NHK障害福祉賞

障害のある人の体験記録や、福祉関係者、家族などの実践記録を広く社会に伝える「障害福祉賞」には410編の応募があった。選考の結果、次の実践記録が入選した。

第1部門 障害のある本人の部門
第2部門 障害のある人とともに歩んでいる人の部門

応募数 410編(第1部門:291編、第2部門:119編)

入選作

入選作品は「第48回障害福祉賞入選作品集」として刷成し、広く頒布したほか、朗読による音声版(テープ、デジタル録音)、点字版の入選集を作成し、全国の点字図書館や視覚障害の応募者などに提供した。贈呈式は12月4日にNHK放送センターで行った。
また入選作品や受賞者の思いを、12月2日、3日「ハートネットTV」(Eテレ)や12月27日「ラジオ深夜便」(ラジオ第1)などで紹介した。

目次に戻る

(9)NHKハート展

第18回ハート展(巡回展)

18回目の「NHKハート展」には、障害のある人が綴った詩5,309編が寄せられ、その中から選ばれた50編の詩と、その詩をもとに、各界の著名人が制作したアート作品を組み合わせて展示した。
それぞれの想いがこもった50対の作品は、平成23年2月29日から3月7日まで日本橋三越で開かれた東京展をはじめ、24年度中に水戸市、福岡市、八戸市など、全国12か所の巡回展で紹介した。入場者は4万8,122人に上った。作品紹介や作詞者作画者のインタビューを、年間を通じて「ハートネットTV」などで放送した。

第19回ハート展の作品募集

また25年度に詩を募集し、26年度に巡回展を行う「第19回NHKハート展」には4,085編の詩が寄せられ、選考会で50編が選ばれた。巡回展は平成26年2月26日から3月3日までの日本橋三越での東京展をはじめとして、26年度内に全国およそ10会場で開催する予定。

第18回NHKハート展 会場と入場者数(11会場)

目次に戻る

3.高齢者福祉事業

(1)NHK福祉ネットワーク「公開 すこやか長寿」

町のご長寿さんに元気の秘訣を伺う「ハートネットTV 公開すこやか長寿」の番組収録(Eテレで放送)と、ゲストによる高齢者の健康や生き方に役立つ講演を行うイベントを全国6か所で開催した。山田 邦子さん、岩崎 恭子さん、中島 啓江さん、西川 ヘレンさんなど多彩なゲストが講演を行い、会場には多くの人がつめかけた。

目次に戻る

(2)認知症フォーラム、NHKハートフォーラム(認知症)

NHKの放送と連動させながら、認知症フォーラムやNHKハートフォーラムを、全国13会場で開催し、7,500人の人が参加した。認知症の人の家族だけでなく介護施設の職員をはじめ、医療・介護従事者の参加があった。
地域の介護の現場をVTRで紹介しており「わかりやすい」「より身近に感じられた」と好評であった。また、出演者として認知症の本人が登壇した会場では、「認知症の人の心の中での葛藤を直接聞けてよかった」「認知症になっても心は生きている、それを見せつけられた」などの感想が寄せられている。

認知症フォーラム「あきらめない〜最新医療と社会の支え〜」

患者数が300万人を超えていると言われる認知症は、ここ数年治療や介護の面で目覚しい進歩がある。事業団と読売新聞が主催したこのフォーラムでは、認知症になっても安心して暮らすための情報やサポートの取り組みを紹介した。また地域放送や紙面、ウェブサイトなどとも連動させ啓発につとめた。

NHKでの放送

フォーラム認知症新時代 「いきいきと暮らすために〜医療・介護・地域の支え合い〜」

医療・介護の最新情報と、認知症の人と家族を支援する地域の取り組みを紹介した。地元の先進的な事例を取り上げ、地域支援の輪が広がるように努めた。

NHKでの放送

NHKハートフォーラム(認知症)

フォーラムを開催する地元での身近な取り組みなどを例にして、医療・介護の望ましい あり方や、地域での支援体制の課題について話し合った。

認知症に関するパンフレットの配布

冊子「家族が認知症と診断されたあなたへ〜おすすめ介護術」(20年度作成)を3万部増刷し、刷成部数は合計16万部となった。冊子「もの忘れが気になるあなたへ」(19年度作成・21万部刷成)とあわせ、2万2,500部をフォーラムの参加者や希望者に配布した。

目次に戻る

(3)NHKハートフォーラム(高齢者福祉)、慰問活動

高齢者が健康で安心して暮らせる地域づくりをテーマにしたフォーラムを開催した。

施設への慰問活動

東海地方の病院や高齢者福祉施設4か所で、津軽三味線と民謡、講談による慰問演奏会を行った。参加者は合計185人。

目次に戻る

(4)NHK銀の雫文芸賞2013

高齢社会をどう生きるかをテーマにした小説を一般から募集した。「雫石とみ文芸賞基金」によって20年間実施してきた「銀の雫文芸賞」の成果を継承し、NHKの共催を得て、平成20年度から「NHK銀の雫文芸賞」として行っている。
作品の審査には、作家の出久根 達郎さん、マンガ家の里中 満智子さん、脚本家の竹山 洋さん、NHKドラマ番組部長、文化福祉番組部長があたった。672編の応募があり、次の3編が入選した。
入選作品は、「NHK銀の雫文芸賞2013作品集」として製本し、広く頒布した。

最優秀の柳 霧津子さんの作品『マー子さん』はラジオドラマ化し、11月2日「FMシアター」で放送した。

目次に戻る

(5)NHK介護百人一首

日々の介護の様子や思いなどを詠んだ短歌を募集し、珠玉の作品を選び「介護百人一首2014」として作品集にまとめた。8回目の25年度は、15歳の高校生から101歳の女性まで幅広い人々から11,606首の短歌が集まった。
入選作品はEテレ「ハートネットTV」で紹介されたほか、パネルにして26年度に各地の放送局などで展示する。

目次に戻る

4.福祉情報の提供事業

(1)福祉ライブラリー活動

「福祉ライブラリー」はNHKの福祉番組を複製して貸し出すもので、事業団創立以来の基幹事業の一つである。ラインナップも多様で教育や福祉の現場で活用されている。

福祉ビデオライブラリー

25年度に新しくライブラリー化した番組は41。テレビの福祉番組「ハートネットTV」「バリバラ」のほか、「きょうの健康」「NHKスペシャル」など視聴者から反響の大きかった番組や福祉の学習に役立つ番組をDVDに複製した。 また、事業団制作の福祉DVD教材もライブラリーに加えた。
20年度からオンライン予約システムを導入し、パソコンを使っていつでも予約ができるようにしている。現在、登録者は5,755人で、昨年度より1,300人増加し、電話予約にかわってオンライン利用が主流になっている。
年間の貸出利用は5,925本(昨年度より800本増)。おもな利用者は、福祉関係の大学・専門学校や、福祉の現場で働く人、障害児の親や障害者本人、介護に携わっている家族、ボランティア団体などである。
利用した人が特に多かったソフトは事業団制作のDVD「うつ病」(802人)。次に多かったのは「認知症ケア」(247人)「高次脳機能障害のリハビリテーション」(146人)「統合失調症の人の回復力を高める家族のコミュニケーション」(140人)でいずれも事業団制作のDVD3本シリーズ。じっくり勉強したいという感想が多かった。
また「介護」「発達障害」「認知症」を取り上げたNHK番組のライブラリーの利用も多くあった。

聴覚障害者向け字幕ビデオライブラリー

NHKの字幕放送の拡充にあわせ、聴覚障害者向けサービスとして平成15年度から行っている。25年度は「ハートネットTV」「プロフェッショナル・仕事の流儀」「きょうの健康」など6番組を字幕化し(通算67番組)、全国59の聴覚障害者関係施設と当事業団で貸し出しを行っている。

テープライブラリー

視覚障害者向けのテープライブラリーは、文芸作品や古典の名作を朗読したNHKの番組を複製して、全国47か所の委託施設で貸し出しを行っている。各地の点字図書館でデジタル図書での利用が多くなっているため、平成20年度からソフト作成をテープからデジタル録音のDAISYに切り替えている。
25年度はNHKの『ラジオ文芸館』から、「練習球」(あさのあつこ)、「切子皿」(伊集院 静)、「桃太郎VS金太郎」(清水 義範)など5作品を、『朗読』から「薄田泣董の爺さんの話」、「中島敦の妖怪の話」など、『古典講読』から「源氏物語」を複製した。
貸し出し利用は年間5,146本で、「ラジオ文芸館」などの現代の作品に人気があった。

目次に戻る

(2)福祉DVD教材「発達障害の子どもたち〜"自立"をめざして〜」の制作

「発達障害」という言葉は広く知られるようになり、各地で先進的な支援の取り組みが生まれてきてはいるが、その試みは多くの人に伝わっているとはいえない。このDVD教材は、どこで暮らしていても、どんな場所で学んでいても、発達障害のある子どもとその家族が適切なサポートを受けられることを目ざし、現場の実践や支援者の声、子どもと向き合う親の姿を描き、「良い支援」とは何か、そのヒントを学べるように制作した。
福祉DVD教材(テキストつき)は3枚組で、700セット制作した。全国の児童発達支援事業所、児童発達支援センター、特殊教育センター、発達障害者支援センター、親の会、福祉系大学などで役立ててもらうため、希望する所に無料で配布した。
また事業団の「福祉ビデオライブラリー」でも貸し出しを行ない、より多くの人に利用してもらう。

(各巻の内容)

なお、本事業はJKAの補助金を得て実施した。

目次に戻る

(3)「認知症」「思春期のこころの病」「がん患者のための体と心の緩和ケア」の冊子を希望者へ配布

「もの忘れが気になるあなたへ」 (19年度作成 監修:小阪 憲司 横浜ほうゆう病院長)
認知症はどんな病気か、治療法や予防法、相談窓口などを分かりやすくまとめたもので、3万部を増刷した。総発行数は21万部となった。

「家族が認知症と診断されたあなたへ〜おすすめ介護術〜」(20年度作成 監修:須貝 佑一 認知症介護研究・研修東京センター副センター長)
認知症の介護のポイントを症状別に解説したもので、3万部増刷し発行数は13万部。

25年度は両冊子あわせて2万2,500部をフォーラムの参加者や希望者に無料で配布した。送料は利用者負担。

「思春期のこころの病〜"悩み"と"病"の見分け方〜」(監修:青木 省三 川崎医科大学精神科学教室教授)
思春期特有の精神疾患の見分け方と対応について啓発する冊子で11万部作成。 25年度は、学校や勉強会をするNPOなどの要望にこたえ3,500部を頒布した。送料は利用者負担。

「がん患者のための体と心の緩和ケア〜痛みと悩みをやわらげて自分らしい療養生活を送るために〜」(監修:的場 元弘 国立がん研究センター中央病院緩和医療科・精神腫瘍科長)
がん患者の体の痛みや心の苦しみを和らげる「緩和ケア」について、病院や相談機関の情報を含めて解説した。4万部作成。25年度は希望者に4,000部を送付した。送料は利用者負担。

目次に戻る

5.チャリティー事業

年間を通して数々のチャリティーを行った。

25年度のチャリティーイベントは以下の通り。
(「※」印は物品などの贈呈をした催しで、詳細は、6.(4)に記載)

(1)NHK番組公開チャリティー

目次に戻る

(2)事業団企画チャリティー

目次に戻る

6.その他の支援事業

(1)第25回地域福祉を支援する「わかば基金」

あすの福祉の芽を育てる「わかば基金」は、福祉の分野で地道に活動を続けているグループを支援するために設けられたもので、今回で25回目を迎えた。 24年度から、東日本大震災の被災地で活動している福祉グループに支援金を贈る「東日本大震災被災地支援金部門」を設けており、25年度は57のグループから申請があった。また、「支援金部門」には272グループ、「リサイクルパソコン部門」に140グループから申し込みがあった。
「リサイクルパソコン部門」は、NHKやNHK関連団体から不用になったパソコンを寄贈してもらい、新しいアプリケーションソフトを入れた上で必要としている福祉団体に贈呈するもので、NHKグループの新しい社会貢献活動となっている。
選考委員会を経て、全国11グループに総額667万円の支援金、21グループに52台のパソコンを贈った。また、被災地には14グループに745万円の支援金を贈ることができた。支援総額は、パソコン費用を含め1,595万円。
25年度は、支援額を豊かにするための「N響チャリティーコンサートHOPE」は実施できなかったが、わかば基金指定の個人寄付があったため、24年度に比べ、支援金総額は150万円増となった。
なお、初回からの贈呈件数は542に上る。

<支援金部門 支援先>*11グループ *支援金総額:667万円

<リサイクルパソコン部門 支援先>*21グループ *リサイクルパソコン贈呈:52台 

<東日本大震災被災地支援金部門 支援先>*14グループ *支援金総額:745万円

目次に戻る

(2)NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい

「平成25年度NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい」をNHK、中央共同募金会、日本赤十字社と共催で12月1日〜25日の間実施した。

「歳末たすけあい」の義援金は、中央共同募金会を通じて被災した福祉施設への支援、障害のある人や、援助や介護を必要とするひとり暮らしのお年寄り、援助を必要とする子どもたち、長期療養生活をしている人や生活が困難な世帯などに配分される。
「海外たすけあい」では、日本赤十字社が赤十字国際機関と協力し、紛争や自然災害に苦しむ人たちのために使われる。

受付件数・金額(全国集計)

目次に戻る

(3)「災害たすけあい」受け付けの実施

事業団ではNHK、日本赤十字社、共同募金会とともに、大規模な災害が起こった際に、その都度「災害たすけあい」を実施している。25年度は国内で起きた6件の災害で実施した。
23年3月11日発災した「東日本大震災」については、この4者による義援金受付は26年3月末で終了した。全国のNHK窓口に寄せられた義援金は22億9,200万円を超し、当事業団の窓口にも多くの義援金が寄せられた。東日本大震災の義援金総額は、3,714億円。

目次に戻る

(4)物品などの寄贈

NHK福祉大相撲による「福祉相撲号」の寄贈

26年2月11日に開催した「第47回NHK福祉大相撲」(入場者4,282人)の純益により福祉車両「福祉相撲号」5台を購入し、これに日産自動車からの寄贈1台と合わせて合計6台を障害のある人たちの療育活動や、お年寄りのデイケアなどの福祉活動を行っている施設・団体に寄贈した。
「NHK福祉大相撲」の模様は、2月16日総合テレビで放送した。

<寄贈先>

「歌謡チャリティーコンサート」による車いす付き介護浴槽と障害者スポーツ用具の寄贈

4月19日盛岡市で開催した「歌謡チャリティーコンサート」(入場者1269人)の純益で「車いす付き介護浴槽」を購入し、東日本大震災の被災施設など岩手県内の3か所の高齢者福祉施設に贈呈した。
コンサートは4月30日、総合テレビで放送した。

(贈呈先)

11月1日、札幌市で開催した「歌謡チャリティーコンサート」(入場者2065人)の純益で「障害者スポーツ用具」を全国8つの障害者スポーツ団体に贈呈した。 ステージの模様は12月17日、総合テレビで放送。

(贈呈先)

高齢者施設に「月刊 ラジオ深夜便」を寄贈

NHKサービスセンターの寄贈による月刊「ラジオ深夜便」を全国1,901か所の老人福祉施設(軽費老人ホーム、養護老人ホーム、高齢者ケアハウス)に対し、年12回、毎月7,566冊を贈呈した。

「NHK厚生文化事業団チャリティー文庫」の寄贈

中部支局が名古屋市と津市で開催した「NHK厚生文化チャリティー展」の純益の一部で、

に「チャリティー文庫」としてDVDを寄贈した。
両社会福祉協議会は、市内の福祉施設にこのチャリティー文庫を貸し出す窓口となる。

目次に戻る

(5)催物への招待

事業団の催し物の開催時に、視覚障害の人や知的障害のある人など490人を招待した。

目次に戻る

8.広報活動

事業団の活動を周知するため、事業内容を紹介した印刷物をイベント会場で配布し、福祉活動への理解と協力を求めた。またホームページでは、催し物の周知や活動報告などを分かりやすく伝え、ネット時代にふさわしい広報活動に努めた。

(1)広報物の作成・配布

NHK厚生文化事業団年報「心豊かな福祉社会をめざして」を発行して、事業団の福祉活動への理解促進を図った。
事業団の業務を紹介したパンフレット「事業団のふくし」を作成して、イベント会場などで配布した。また会場では、イベントのテーマにそった冊子を配るほか、事業団作成の福祉DVD教材、福祉ビデオライブラリーの利用案内などをしている。
NHKの放送、ニュースによる各種事業の紹介のほか、外部メディアへの情報提供を積極的に行い、新聞・雑誌などでも事業の予定や活動内容が紹介された。

目次に戻る

(2)広報活動の強化にホームページの拡充

事業団のホームページをより多くの人の利用してもらうため、「今週のおすすめ」など情報の充実を図り、ビジュアルでわかりやすい画面構成に努めた。 25年度のアクセス数は、前年度に比べて15万ページビュー増加し、101万ページビューとなった。
掲載している主な内容は、

など多岐にわたる。

ホームページの利用者からメールで寄せられたさまざまな問い合わせには、各担当者が即応するよう努めた。

目次に戻る

8.共催、後援、協賛した事業

(1)共催事業

上方落語の会

*NHK大阪放送局と共催

4月11日、5月9日、6月6日、7月4日、9月5日、10月10日、11月7日、12月5日
(平成26年)1月9日、2月6日、3月6日(計11回)(計11回)
NHK大阪ホール 入場者計 8,858人

東西浪曲大会

*NHK大阪放送局と共催

8月31日 NHK大阪ホール 入場者 1,131人

NHK歳末海外たすけあい「うたでつなごう ハートフルコンサート」

*NHK大阪放送局と共催

12月1日 NHK大阪放送局アトリウム うたの参加者 331人 入場者 400人

目次に戻る

(2)後援、協賛したもの

福祉、教育、医療団体などが実施する研修、啓発事業、また美術、スポーツ団体などが福祉目的で開催するチャリティー事業に積極的に協力し、本部・支局合わせて183の事業を後援、協賛した。

福祉関連の催し(149件)

「自閉症啓発デー2013」「第41回日本車椅子バスケットボール選手権大会」「世界ダウン症の日記念イベント」「第40回国際福祉機器展」「福祉の就職総合フェア2013inOSAKA」「脳外傷リハビリテーション講習会」「第37回福岡県情緒障害教育研究会」などを後援、協賛した。

チャリティー催し物(34件)

「国展」「春陽展」「東光展」「二科展」「アザミ革工芸展」「チアリーディング日本選手権大会」「KEIRINグランプリ2013」「チャリティーニット展」「彩日展」「手づくりフェア in 九州」などのチャリティー催しを後援し、その益金から事業団へ寄付をいただいた。

目次に戻る

9.寄付金

当事業団への寄付金には二種類ある。個人や団体からのご寄付である一般寄付金と、当団が主催、後援、協賛したチャリティー事業からのご寄付であるチャリティー寄付金である。

25年度は、

に上った。

目次に戻る

10.賛助会員・維持会員

賛助会員は一般法人に広く協力を求め、本年度は8団体9口の新規入会があった。しかし業績不振等により、減額1団体1口、退会13団体13口の申し出もあり、合わせて154団体から2,150万円の支援を受けた。
維持会員については、NHKおよびNHK関連団体役職員、NHK旧友会員等 6,908人の方々の協力を得て、その額は1,199万2,250円に達した。

〔特別賛助会員〕

〔賛助会員〕

(平成26年3月31日現在)

目次に戻る

12.役員

(1)役員体制(平成26年3月31日現在)

目次に戻る

(2)理事および監事に支払った報酬等の額

当該事業年度における当事業団の理事および監事に対する報酬等の内容は、以下のとおり。
理事 13人 2,850万円
監事 2人 

(注)
1.上記人数には、当期中に退任した非常勤理事3人が含まれる。
2.上記のうち、非常勤の理事11人、監事2人には、報酬は支払っていない。

終わり

目次に戻る