NHK厚生文化事業団 平成23年度事業報告書

目次

はじめに

東日本大震災から1年余りが過ぎましたが、復興の歩みは遅く、その道のりは未だに遠くて険しいのが現実です。
平成23年度、事業団は被災地支援に積極的に取り組んできました。
NHKとともに義援金の受付窓口をつとめ、また自らも阪神大震災以来積み立ててきた災害救護金の1,000万円を義援金として拠出しました。また、「歌謡チャリティーコンサート」や「福祉大相撲」など、放送と連動してチャリティーイベントを開催し、その収益を被災地支援に充てました。さらに静岡県の三島市と組んで「東日本大震災から1年・支援チャリティー 朗読と音楽の夕べ」を開催しました。三島市民にとって地震は他人事ではないという背景もあって、復興支援への温かいエールが送られました。この公演の収益は、被災地を支援するボランティア活動を応援するために「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」に寄付しました。
このように23年度は、事業団の通常の福祉事業に加えて、被災地支援活動を展開してきましたが、その一方で、外部の一般企業・団体からの寄付が大震災の義援金に集中して、事業団としては苦しい財政運営を強いられました。
そんな中、新たに「N響チャリティーコンサートHOPE」を立ち上げ、その純益を「わかば基金」に充当して地域福祉活動の支援を幅広く展開しました。
また、NHKグループ各社の皆さまから格別の力強いご支援をいただき、継続事業や新規事業など、予定したすべての福祉事業を実施し、社会福祉法人としての使命を全うすることができました。

東日本大震災からの復興を支援する事業の実施

「歌謡チャリティーコンサート」や「福祉大相撲」などのチャリティーを実施し、義援金を寄付したほか、福祉車両を被災地の福祉施設に贈りました。また、東日本大震災から1年の3月に、チャリティー「朗読と音楽の夕べ」を行って、災害ボランテイアを応援する募金に寄付するなど、NHKの放送と連携しながら被災地支援に取り組みました。

発達障害や精神疾患など、今日的課題にこたえる障害福祉支援

発達障害に関しては、「学齢期の支援」や「就業のための支援」など関心の高いテーマでフォーラムを全国10か所で実施、3,200人あまりの参加者がありました。また、精神疾患などについても力を入れ「うつ病・躁うつ病」「思春期のこころと病」「育児ストレスと児童虐待」などのフォーラムを各地で行い、その切実なニーズに応えました。

認知症に関する啓発事業

大きな社会問題である認知症については、全国17か所でフォーラムを実施し、11,000人を上回る参加がありました。NHKの地域放送でその内容を放送したほか、「認知症ケア」についてのDVD教材を制作するなど、多角的な情報提供につとめました。

地域福祉活動への支援

「わかば基金」では、地域の福祉団体に支援金や、NHKグループの協力による「リサイクルパソコン」を贈呈しました。その財源を確保するため、新たに「N響チャリティーコンサートHOPE」を実施し、その益金でより多くのグループを支援することができました。

目次に戻る

1.東日本大震災の復興を支援する事業

(1)NHK厚生文化事業団のさまざまな事業を復興支援に展開

平成23年度は、事業団のさまざまな事業を通じて東日本大震災の復興支援に取り組んだ。チャリティー事業「第45回福祉大相撲」では、その純益で福祉車両「福祉相撲号」8台を、東日本大震災で特に被害の大きかった岩手、宮城、福島県の福祉施設に寄贈した。
贈呈先の施設はいずれも、津波で車が流された、あるいは、福島第一原子力発電所事故で警戒区域に指定され福祉車両を放棄せざるをえなかった所であり、被災地の福祉施設にとって必要不可欠な車の寄贈は、大変感謝された。 7.(4)参照
また、8月に震災復興支援のため特別に実施した「歌謡チャリティーコンサート」では、その純益を東日本大震災義援金として中央共同募金会に寄付した。

さらに「わかば基金」でも、募集時期が発災直後のため数は少なかったが、被災地の福祉グループに支援金を贈り、壊れた施設の復旧や新しい事業展開に役だててもらうことができた。 7.(1)参照
復興への道のりが長期化する中、24年度はこの「わかば基金」に「東日本大震災被災地支援金部門」を新設し、被災地の福祉団体支援を更に充実させていく。

目次に戻る

(2)東日本大震災から1年・支援チャリティー 朗読と音楽の夕べ

24年3月、被災地復興を支えるボランティアを支援するため、静岡県三島市で「東日本大震災から1年・支援チャリティー 朗読と音楽の夕べ」を実施した。女優の岸本 加世子さんが、津波に追われた体験をつづった少年の作文を朗読し、自らも被災者である仙台の津軽三味線奏者たちによる競演が行われた。
会場にはおよそ1,000人の観客がつめかけ、「あらためて被災地支援の必要性を感じた」などの声が寄せられた。催しの純益は、全額「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」に寄付した。
チャリティーイベントの模様は、4月7日にラジオ第1「とっておきラジオ」で放送した。

目次に戻る

2.障害者福祉事業

(1)こどもの発達相談会および療育キャンプ

大阪、名古屋、福岡において、ことばや発達の遅れた子どもとその親のための定例相談会を開くとともに、大阪ではLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)など発達障害児を対象にした相談会を行った。また名古屋では、親と子の療育キャンプ「やまびこキャンプ」を実施した。

定例相談会

大阪、名古屋、福岡で13回実施した。知的や言語の発達のおくれ、自閉症、重複障害の子どもの相談が多かった。

LD教育相談会

大阪では、平成12年度からLD、ADHD、高機能自閉症児などを対象にした「LD教育相談会」を行っている。

親と子の療育キャンプ

第28回「やまびこキャンプ」を愛知県旭高原で実施した。愛知教育大学とそのOBの人たちの協力により、発達障害のある子どもたち17人が、自然の中で集団生活を体験した。家族やボランティアなども93人参加した。

目次に戻る

(2)肢体不自由児・者の療育活動

肢体不自由児・者の療育キャンプを、支援団体との共催・協力により、各地で実施した。夏季、冬季の野外活動を通じて、参加者の自立と社会参加を促進し、あわせて交流の輪を広げた。

目次に戻る

(3)NHKハートフォーラム(発達障害)

自閉症やLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などについてNHKの地域放送局や「親の会」などと共催し、NHKハートフォーラムを10回開催した。23年度は、関心の高い「学齢期の教育支援」や、「就労」の問題を数多くとりあげたため、保護者だけでなく特別支援教育を推進する教員など教育関係者も多数参加した。

目次に戻る

(4)精神疾患に関するNHKハートフォーラム

多くの世代にとって身近な病気となっている、さまざまな精神疾患について最新情報を提供し、支援のあり方を考えるフォーラムを全国で行った。

NHKハートフォーラム「うつ病・躁うつ病を知る」

うつ病、躁うつ病は15人に1人が発症するという病気。二つの病気の違いや、早期受診の大切さ、薬とのつきあい方など、最新医療情報を伝え、社会支援プログラムについて話し合った。新規のフォーラム(1回目は前年度の3月) で全国6か所で実施した。

NHKでの放送

NHKハートフォーラム「思春期の“こころ”と“病”を知る」

思春期特有の一般的な悩みと精神疾患との見分け方や、対応の仕方などを知るフォーラムを2回実施した。思春期の子どもを持つ親や、教師、養護教諭が数多く参加した。

目次に戻る

(5)そのほかのNHKハートフォーラム(障害者福祉、児童福祉など)

NHKハートフォーラム「育児ストレスを防ぐ〜子ども虐待にならないために」

全国の児童虐待の相談件数は55,000件。一般家庭でも孤立や育児不安からストレスが高まり、虐待に至るケースも多い。育児に悩む親たちにむけ、子育て支援の事例を紹介し、そのあり方を考えた。23年度に新しく実施したフォーラム。

NHKハートフォーラム「リハビリ最前線・脳損傷からの回復を目指す」

事業団が作成した「高次脳機能障害」についての福祉ビデオの素材を使いながら、事故や病気で脳損傷を負った人の入院中の訓練や退院後のリハビリなどを紹介し、後遺症があっても豊かな人生を送るにはどうすれば良いのかを考えた。

NHKハートフォーラム(新しい福祉)

このほか、NHK各地域放送局とさまざまな福祉課題を考えるハートフォーラムを実施した。

目次に戻る

(6)福祉の仕事に興味を持つ若い人に向けたフォーラム

名古屋で、福祉の仕事に興味を持っている学生たちを対象に、愛知県社会福祉協議会、NHK名古屋放送局、中日新聞社との共催でフォーラムを開催した。

目次に戻る

(7)障害者スポーツイベントの開催

知的障害者のスポーツ大会を東京で実施したほか、全国2か所で障害のある人もない人も一緒になって障害者スポーツを楽しむイベント「ハートスポーツフェスタ」を実施した。

第45回スポーツの集い

重度の障害者が参加できる全国でも数少ないスポーツ大会として、東京都障害者スポーツ協会と協力して開催した。参加者は、100メートル走、大玉ころがし、綱引きなどを楽しんだ。

NHKハートスポーツフェスタ

目次に戻る

(8)そのほかの福祉イベントの開催

福祉施設の手づくり製品販売会

NHK放送センター内で、福祉施設の製品販売会を年間6回開催した。放送センターで働く人たちに福祉を身近に感じてもらい、あわせて障害のある人たちの就労に役立つことを願って、事業団とNHK共済会が共同で実施した。毎月の販売会は、スイーツの販売だが、12月の障害者週間に開いた「手づくりの心届けます市」には、10の福祉団体が出店し、菓子のほか、アクセサリーやバッグ、日用雑貨などを販売した。障害のある人も呼び込みや販売をし、毎回1,000人ほどの人でにぎわった。

第6回NHK福岡ハートパーク

福岡市で開催した「第6回NHK福岡ハートパーク」では、障害のある人が描いた絵726枚を、大濠公園の街路灯や福岡市美術館に飾り展示した。

目次に戻る

(9)第46回NHK障害福祉賞

障害のある人の体験記録や、福祉関係者、家族などの記録を広く社会に伝える「障害福祉賞」には、第1部門を中心に383編の応募があった。選考の結果、次の実践記録が入選した。

第1部門 障害のある本人の部門
第2部門 障害のある人とともに歩んでいる人の部門

応募数 383編(第1部門:277編、第2部門:106編)

入選作

入選作品は「第46回障害福祉賞入選作品集」として刷成し、広く頒布したほか、朗読による音声版(テープ、デジタル録音)、点字版の入選集を作成し、全国の点字図書館や視覚障害の応募者などに提供した。贈呈式は12月7日にNHK放送センターで行った。
また、入選作品を「ハートをつなごう」(12月26日〜27日 Eテレ)のほか、12月5日の「ラジオ深夜便」(ラジオ第1)や、18日の「ともに生きる」(ラジオ第2)で紹介した。

目次に戻る

(10)NHKハート展

平成6年度以来、16回目を迎えた「NHKハート展」には、障害のある人が綴った詩5,459編が寄せられ、その中から選ばれた50編の詩と、その詩をもとに各界の著名人が制作したアート作品を組み合わせて展示した。
それぞれの想いがこもった50対の作品は、平成23年3月2日から7日まで開かれた日本橋三越での東京展をはじめ、大阪市、岡山市、福岡市など10か所の巡回展で紹介した。入場者は5万3,790人に上った。
また、24年度に巡回展を行う「第17回NHKハート展」には、5,680編の詩が寄せられた。巡回展は、平成24年2月29日から3月5日までの日本橋三越での東京展をはじめとして、年度内に全国12会場で開催する。

第16回NHKハート展 会場と入場者数(10会場)

目次に戻る

3.高齢者福祉事業

(1)NHK福祉ネットワーク「公開 すこやか長寿」

NHK「福祉ネットワーク 公開すこやか長寿」の番組収録(Eテレ 毎月第3木曜放送)と、ゲストによる高齢者の健康や生き方に役立つ講演を行うイベントを、全国10か所で開催した。ゲストは、ヨネスケさん、山田 邦子さん、水前寺 清子さん。

目次に戻る

(2)認知症フォーラム、NHKハートフォーラム(認知症)

NHKの放送と連動させながら、認知症フォーラムやNHKハートフォーラムを、全国17会場で開催した。のべ1万1,000人を超す人々が参加した。認知症の人の家族だけでなく、介護施設の職員をはじめ、医療・介護従事者の参加も多かった。
会場でのアンケートには、「地元の医師や施設の人たちが、こんなにも熱心に取り組んでいる姿を見て、心にゆとりが持てました」「今日学んだことをぜひ周りの人にも伝えていきたい」などの言葉が多数つづられている。

認知症フォーラム「あきらめない〜最新医療と社会の支え〜」

患者数205万人と言われる認知症は、ここ数年治療や介護の面で目覚しい進歩がある。事業団とNHK、読売新聞が主催したこのフォーラムでは、認知症になっても安心して暮らすための最新情報を紹介した。また、地域放送や紙面、ウェブサイトなどとも連動させ啓発につとめた。

NHKでの放送

フォーラム認知症新時代「いきいきと暮らすために〜医療・介護・地域の支え合い〜」

医療・介護の最新情報とともに、認知症の人と家族を支援する地域の取り組みを紹介した。フォーラムを開催した地元での先進的な事例を取り上げることで、さらに地域支援の輪が広がるように後押しをした。NHKとの共催で、全国5か所で行った。

NHKでの放送

NHKハートフォーラム(認知症)

フォーラムを開催する地元での身近な取り組みなどを例にして、医療・介護の望ましいあり方や、地域での支援体制の課題について話し合った。

認知症に関する小冊子の配布

認知症に対する正しい知識を持ってもらうために、小冊子「もの忘れが気になるあなたへ」 (19年度作成)を3万部増刷して、フォーラムの参加者や希望者に配布した。発行部数は合計18万部となった。
また家族向けの小冊子「家族が認知症と診断されたあなたへ--おすすめ介護術」(20年度作成)を3万分増刷し、発行部数は合計13万部となった。 5.(3)参照

目次に戻る

(3)NHKハートフォーラム(高齢者福祉)、慰問活動

高齢者が健康で安心して暮らせる地域づくりをテーマにしたフォーラムを開催した。

施設への慰問活動

東海地方の病院や高齢者福祉施設4か所で、津軽三味線と民謡による慰問演奏会を行った。参加者は合計377人。

目次に戻る

(4)ラジオ公開生放送「鎌田 實 いのちの対話」の実施

地域医療の第一人者である長野県諏訪中央病院の鎌田實医師をホスト役に、毎回ゲストを迎えて、「いのち」について参加者とともに考える公開生放送(ラジオ第1)のイベント。23年度は4回実施し、多くの聴取者が参加した。

目次に戻る

(5)NHK銀の雫文芸賞2011

高齢社会をどう生きるかをテーマにした小説を一般から募集した。「雫石とみ文芸賞基金」によって20年間実施してきた「銀の雫文芸賞」の成果を継承し、NHKの共催を得て、平成20年度から「NHK銀の雫文芸賞」として行っている。
作品の審査には、作家の出久根 達郎さん、マンガ家の里中 満智子さん、脚本家の竹山 洋さん、そしてNHKドラマ番組部長、文化福祉番組部長があたった。716編の応募があり、次の3編が入選した。
入選作品は、「NHK銀の雫文芸賞2011作品集」として刷成し、広く頒布した。

最優秀の逸見 真由さんの作品「ごまめの歯軋り」はラジオドラマ化され、11月19日の「FMシアター」で放送した。

目次に戻る

(6)NHK介護百人一首

日々の介護の様子や思いなどを詠んだ短歌を募集し、珠玉の作品を選び「介護百人一首2012」として作品集にまとめた。6回目の23年度は、過去最多となる9,730首の短歌が集まった。
入選作品は23年2月20、21日にEテレ「福祉ネットワーク」で紹介した。また、パネルにして24年度に各地の放送局などで展示する。

目次に戻る

4.ボランティア活動促進事業

NHKからの受託事業「NHKボランティアネット」は、23年3月11日に東日本大震災が発生したことから、震災関連情報を、年間を通して積極的に掲載した。
「NHKボランティアネット」は、阪神・淡路大震災によりボランティアの機運が高まった平成7年に発足した。以来16年間にわたって、ボランティア情報を求める人たちと、ボランティアに取り組むNPOなどの関係者の双方から、インターネット上の信頼できる媒体として活用されてきた。震災関連以外の様々なボランティア関連分野についても、独自取材記事の掲載に力を入れた。
また、ボランティア活動の課題や魅力を紹介するために、NHKの地域放送局や関係団体などと共催してNHKハートフォーラムを開催した。

(1)NHKボランティアネットの運用

23年度は、3月11日に東北・関東地方を襲った東日本大震災の発生後、直ちに「大震災関連情報」コーナーを立ち上げ、震災関連のニュース、支援・義援金の情報、ボランティアの募集情報、ボランティア希望者の活動に必要な情報を提供する記事を掲載した。
また、ラジオ第1の「つながるラジオ・ふるさとラジオ」と連携を図り、ボランティアネットから番組へ情報提供をする一方、放送の現地リポートをボランティアネットでも掲載するなどし、被災地のボランティア情報の周知に努めた。ボランティアネットの独自取材と「つながるラジオ」との連動記事を合わせると、年間で60本の震災被災地のリポートを掲載した。
震災情報やボランティア情報へのニーズが高まったことで、年間のアクセス数は前年度より34万件増え、437万ページビューに上った。

既存のコーナーでは、「ボラ仲間の活動リポート」、「一歩前へ!会社と社員の社会貢献」、「投稿・私たちからのメッセージ」で情報発信の充実を図った。
また「各地のボランティア情報」では、東日本大震災関連を中心にボランティアを募る全国各地の団体からの依頼に応えて、月に200件を超える募集情報や活動案内などを掲載した。

目次に戻る

(2)NHKハートフォーラム(ボランティア)の開催

NHKの地域放送局と共催して、ボランティア活動を啓発するフォーラムを2回実施した。

目次に戻る

5.福祉情報の提供事業

(1)福祉ライブラリー活動

「福祉ライブラリー」は、NHKの福祉番組を複製して貸し出すもので、事業団創立以来の基幹事業の一つである。新番組や反響の大きかった番組をいち早くライブラリーに加え利用者の便宜を図った。ラインナップも多様で教育や福祉の現場で活用されている。

テープライブラリー

視覚障害者向けのテープライブラリーは、文芸作品や古典の名作を朗読したNHKの番組を複製して、全国47か所の委託施設で貸し出しを行っている。各地の点字図書館では、デジタル図書での利用が多くなっているため、平成20年度から、ソフト作成をテープからデジタル録音のDAISYに切り替えている。
23年度は、NHKの『ラジオ文芸館』から「老妓抄」(岡本 かの子)、「花冷え」(北原 亞以子)、「砲丸ママ」(重松 清)など7作品を、『朗読』から夏目 漱石、林 芙美子、織田 作之助の作品集、『古典講読』から「宇治拾遺物語」を複製した。
貸し出し利用は、年間3,971本に上っている。

ビデオライブラリー

23年度に新しくライブラリー化した作品は60本。テレビの福祉番組「福祉ネットワーク」「きらっといきる」「NHKスペシャル」や、「きょうの健康」「ためしてガッテン!」など、視聴者から反響の大きかった番組や福祉の学習に役立つ番組などをDVDに複製した。 また、事業団制作の福祉ビデオシリーズ「高次脳機能障害」「認知症ケア」もライブラリーに加えた。
20年度からオンライン予約システムを導入し、パソコンを使っていつでも予約ができるようにした。現在オンライン予約登録者は3,442人で、オンラインでの利用も増え、全体の3分の2になっている。
年間の貸出利用は4,857本(枚)。おもな利用者は、福祉関係の大学・専門学校や、福祉の現場で働く人、障害児の親や障害者本人、介護に携わっている家族、ボランティア団体のメンバーなどである。
利用した人が最も多かったのは、事業団制作の福祉ビデオ「高次脳機能障害のリハビリテーション」だった(239人)。次に多かったのは福祉ビデオ「統合失調症の人の回復力を高める家族のコミュニケーション」(87人)。また「認知症」や「発達障害」関係のビデオも利用する人が多い。

聴覚障害者向け字幕ビデオライブラリー

NHKの字幕放送の拡充にあわせ、聴覚障害者向けサービスとして、平成15年度から行っている。23年度は「ハートをつなごう」や「プロフェッショナル・仕事の流儀」など4番組を字幕化し(通算56番組)、全国59の聴覚障害者関係施設と事業団で貸し出しを行っている。

目次に戻る

(2)福祉ビデオシリーズ「認知症ケア」の制作

認知症の人の"その人らしさを大切にする"ケアのあり方について、最新情報を提供するため、3枚組のDVD(テキストつき)を700セット制作した。全国の介護施設や、地域包括支援センター、家族会などで役立ててもらうため無料で配布した。
「職員研修で使っている。認知症ケアの変遷から、今ケアに何が必要なのかよくわかった」「症状が進んでも後悔しない人生を送ることが大切なことを学んだ」などの反響が寄せられている。
また事業団の「福祉ビデオライブラリー」でも貸し出しを行っており、多くの人が利用している。

なお、本事業はJKAの補助金を得て実施した。

目次に戻る

(3)「認知症」冊子、「思春期のこころの病」冊子、「がん患者のための体と心の緩和ケア」冊子の希望者への配布

「もの忘れが気になるあなたへ」(19年度作成 監修:小阪 憲司 横浜ほうゆう病院長)は、認知症はどんな病気か、治療法や予防法、相談窓口などをわかりやすくまとめたもので、3万部を増刷した。総発行数は18万部。
「家族が認知症と診断されたあなたへ〜おすすめ介護術〜」(20年度作成 監修:須貝 佑一 認知症介護研究・研修東京センター副センター長)を3万部増刷した。認知症の介護のポイントを症状別に解説したもので、総発行数は13万部。
23年度、両冊子あわせて4万1,800部を、フォーラムの参加者や希望者に無料で配布した。送料は利用者負担。

「思春期のこころの病〜"悩み"と"病"の見分け方〜」(監修:青木 省三 川崎医科大学精神科学教室教授)は、思春期特有の精神疾患の見分け方と、その対応について啓発するために、21年度に作成したもの。
23年度は、学校や、個人、NPO、行政の相談窓口などからの手に入れたいという要望にこたえ、1万6,500部を送付した。送料は利用者負担とした。また、NHKハートフォーラム「思春期のこころと病を知る」の参加者にも無料で配布した。

「がん患者のための体と心の緩和ケア〜痛みと悩みをやわらげて自分らしい療養生活を送るために〜」(監修:的場 元弘 国立がん研究センター中央病院緩和医療科・精神腫瘍科長)は、がん患者の体の痛みや心の苦しみを和らげる「緩和ケア」について啓発するため、22年度に制作した冊子。緩和ケアとはどういうものか、ケアを受けられる全国の病院、相談できる機関などの情報を、イラストを交えてわかりやすく解説している。
NHKのお知らせなどで知った希望者に、4,000部を送付した。送料は利用者負担。

目次に戻る

(4)ホームページでの「子どもサポートネット」の情報強化

生きづらさを抱える子どもを応援する福祉現場をリポートする「NHK厚生文化事業団・子どもサポートネット」のコーナーでは、知的障害のある高校生の就業支援教室、心の病を抱えた子供たちの家族会、子育てを応援するフォーラムのリポートなどを写真を使って詳しく紹介した。

目次に戻る

(5)NHK福祉キャンペーン「NHKハートプロジェクト」との連携

NHKは「NHKハートプロジェクト」を組織して、「ともに生きる社会」をテーマに、NHKの福祉番組や福祉イベントを年間で計画的にキャンペーン展開している。 事業団では、これまで蓄積してきた福祉事業の経験をもとに、NHKと協力しながら、このキャンペーンを推進している。

目次に戻る

(6)ラジオ番組「ともに生きる・NHK厚生文化事業団だより」

ラジオ番組「ともに生きる」(日曜・ラジオ第2 NHK大阪放送局制作)で毎月1回「NHK厚生文化事業団だより」を放送した。事業団が主催して行ったフォーラムなどの事業について放送を通じて紹介するもので、メディアを変えた事業団の情報発信となっている。
スタジオの解説には、近畿支局の大野支局長があたった。「知りたい具体的な情報をわかりやすく伝えてくれる」と好評であった。

放送日とテーマ

目次に戻る

6.チャリティー事業

23年度は、新しいチャリティー事業を積極的に開発した。「N響チャリティーコンサートHOPE」を行い、「わかば基金」による地域福祉団体の支援を充実させたほか、年間を通して東日本大震災復興支援のチャリティーを展開した。

夏に神戸市で実施した「歌謡チャリティーコンサート」では、純益を東日本大震災義援金として寄付した。冬に行う恒例の「福祉大相撲」の純益で福祉車両を購入し、震災の被害が特に大きかった東北3県の福祉団体に寄贈した。さらに震災から1年たった24年3月には、被災地で復興のための活動をするNPO団体やボランティアを支援するため、チャリティーイベント「朗読と音楽の夕べ」を実施した。

23年度のチャリティーイベントは以下の通り。
(「※」印は物品などの贈呈をした催しで、詳細は、7.(4)に記載)

(1)NHK番組公開チャリティー

目次に戻る

(2)事業団企画チャリティー

目次に戻る

7.その他の支援事業

(1)第23回地域福祉を支援する「わかば基金」

あすの福祉の芽を育てる「わかば基金」は、福祉の分野で地道に活動を続けているグループを支援するために設けられたもので、今回で23回目を迎えた。 「支援金部門」のほか、19年度から始めた「リサイクルパソコン部門」はNHKやNHK関連団体で不用になったパソコンを寄贈してもらい、リサイクルした上で、必要としている福祉団体に贈呈するもので、NHKグループの新しい社会貢献活動となっている。

23年度は、支援する福祉団体への支援金を増やすことをめざし、その財源を確保するため、NHK、NHK交響楽団と共催し、9月4日NHKホールで「N響チャリティーコンサートHOPE」を実施した。第1回のゲストは、ピアニストの辻井 伸行さん。指揮者は外山 雄三さんで、NHKホールは3,173人の観客で満員となった。このコンサートの模様は、Eテレ「N響アワー」で9月25日に放送された。

なお23年度は、第1部門「支援金贈呈の部」に277グループ、第2部門「リサイクルパソコンの部」に124グループから申し込みがあった。
選考委員会の結果、15グループに去年より350万円多い923万円の支援金を贈呈した。また21グループに59台のパソコンを贈った。初回からの贈呈件数は、合計で457グループに上る。

<第1部門支援先>*15グループ *支援金総額:923万円

<第2部門>*21グループ *リサイクルパソコン贈呈:59台

目次に戻る

(2)NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい

「平成23年度NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい」をNHK、中央共同募金会、日本赤十字社と共催で12月1日〜25日の間実施した。
11月26日に秋葉原で行なわれたイベント「あなたのやさしさを2011」やその放送を通じて、義援金がどのように使われているかを紹介した。

「歳末たすけあい」の義援金は、中央共同募金会を通じて被災した福祉施設への支援、障害のある人や、援助や介護を必要とするひとり暮らしのお年寄り、援助を必要とする子どもたち、長期療養生活をしている人や生活が困難な世帯などに配分される。
「海外たすけあい」では、日本赤十字社が赤十字国際機関と協力し、紛争や自然災害に苦しむ人たちのために使われる。

受付件数・金額(全国集計)

目次に戻る

(3)災害義援金受け付けの実施

事業団ではNHK、日本赤十字社、共同募金会とともに、大規模な災害が起こった際には、その都度「災害たすけあい」を実施している。
23年3月11日に発災した「東日本大震災」の義援金については、24年9月末まで実施する予定である。全国のNHKの窓口に寄せられた義援金は20億円を超し、当事業団の窓口にも多くの義援金が寄せられた。24年5月18日現在、東日本大震災の義援金総額は、3,570億円。
また、23年秋の台風12号にともなう災害義援金は以下の通り。

目次に戻る

(4)物品などの寄贈

NHK福祉大相撲による「福祉相撲号」の寄贈

2月11日に開催した、「第45回NHK福祉大相撲」(入場者4,285人)の純益により福祉車両「福祉相撲号」7台を購入し、これに日産自動車からの寄贈1台と合わせて8台を障害のある人たちの療育活動や、お年寄りのデイケアなどの福祉活動を行っている施設・団体に寄贈した。
23年度は東日本大震災で特に被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県の福祉施設に寄贈することとした。
「NHK福祉大相撲」の模様は、2月19日総合テレビで放送した。

<寄贈先>

「歌謡チャリティーコンサート」による義援金と障害者スポーツ用具の寄贈

夏と秋に開催した「歌謡チャリティーコンサート」の純益により、東日本大震災の義援金を贈ったほか、障害者スポーツ用具を購入し、福祉施設・団体へ贈呈した。
なお、4月に盛岡市で実施する予定であった「歌謡チャリティーコンサート」は震災のため中止された。

高齢者施設に「月刊 ラジオ深夜便」を寄贈

NHKサービスセンターの寄贈による月刊「ラジオ深夜便」を全国1,940か所の老人福祉施設(軽費老人ホーム、養護老人ホーム、高齢者ケアハウス)に対し、年12回、毎回3,880冊を贈呈した。

「NHK厚生文化事業団チャリティー文庫」の寄贈

中部支局が名古屋市と津市で秋に開催した「NHK厚生文化チャリティー展」の純益の一部で、

の3施設に「チャリティー文庫」としてCDとDVDを寄贈した。

目次に戻る

(5)催物への招待

事業団の催し物の開催時に、視覚障害の人や知的障害のある人など926人を招待した。

目次に戻る

8.広報活動

事業団の活動を広く周知するため、事業内容を紹介する印刷物を催し物会場で配布し、福祉活動への理解と協力を求めることに努めた。また、ホームページでは、催し物の周知や活動報告などを分かりやすく伝え、ネット時代にふさわしい広報活動に努めた。

(1)広報物の作成・配布

NHK厚生文化事業団年報「心豊かな福祉社会をめざして」を発行して、事業団の福祉活動への理解促進を図った。
また、事業団の業務を紹介したパンフレット「事業団のふくし」を作成して、イベント会場などで配布し周知活動を行った。
さらに、NHKの放送、ニュースによる各種事業の紹介のほか、外部メディアへの情報提供を積極的に行い、新聞・雑誌などでも活動内容が紹介された。

目次に戻る

(2)広報活動の強化にホームページの拡充

ネット時代をむかえ、事業団のホームページを充実させ、利用者に見やすく分かりやすい情報を提供するように努めた。
掲載内容は、事業団の催し物の予定、実施したフォーラムの報告、「NHK障害福祉賞」や「NHK銀の雫文芸賞」の入選作品紹介、「わかば基金」で支援した団体の活動をリポートする『わかばなかま』、子どもたちの成長をサポートする福祉現場を取材した『子どもサポートネット』、福祉ビデオライブラリーの目録や予約システムなど多岐にわたる。

ホームページの利用者から、メールで寄せられたさまざまな問い合わせには、各担当が、即応するよう努めた。

目次に戻る

9.共催、後援、協賛した事業

(1)共催事業

上方落語の会

*NHK大阪放送局と共催

4月14日、5月12日、6月9日、7月7日、9月8日、10月6日、11月10日、12月8日、(平成24年)2月9日、3月8日(計10回)
NHK大阪ホール 入場者計 7,718人

東西浪曲大会

*NHK大阪放送局と共催

8月27日 NHK大阪ホール 入場者 1,180人

第57回全国里親大会

*厚生労働省、愛知県、全国里親会と共催

10月1日〜2日 名古屋市 参加者 700人

目次に戻る

(2)後援、協賛したもの

福祉、教育、医療団体などが実施する研修、啓発事業、また美術、スポーツ団体などが福祉目的で開催するチャリティー事業に積極的に協力し、本部・支局合わせて150の事業を後援、協賛した。

福祉関連の催し(113件)

「第30回肢体不自由児・者の美術展」「第41回朗読録音奉仕者感謝のつどい」「がん患者大集会」「日米自閉症スペクトラム研究会議」「福祉の就職総合フェア」「第36回わたぼうし音楽祭」「第45回全国ろうあ者体育大会」「生き生き長寿フェア2011」「第29回北九州精神障害者家族連合会大会」などを後援、協賛した。

チャリティー催し物(37件)

「国展」「春陽展」「東光展」「アザミ革工芸展」「チアリーディング日本選手権大会」「KEIRINグランプリ2011」「チャリティー全国大陶器市」「手づくりフェア in 九州」などのチャリティー催しを後援し、その益金から事業団へ寄付をいただいた。

目次に戻る

10.寄付金

当事業団への寄付金には二種類ある。個人や団体からのご寄付である一般寄付金と、当団が主催、後援、協賛したチャリティー事業からのご寄付であるチャリティー寄付金である。

23年度は、

に上った。

目次に戻る

11.賛助会員・維持会員

賛助会員は一般法人に広く協力を求め、本年度は、7団体8口の新規入会があったが、業績不振等により、減額1団体2口、退会20団体22口の申し出もあり、合わせて156団体から2,120万円の支援を受けた。
維持会員については、NHKおよびNHK関連団体役職員、NHK旧友会員等 6,789人の方々の協力を得て、その額は1,209万3,000円に達した。

〔特別賛助会員〕

〔賛助会員〕 (平成24年3月31日現在)

目次に戻る

12.役員

(1)役員体制(平成24年3月31日現在)

目次に戻る

(2)理事および監事に支払った報酬等の額

当該事業年度における当事業団の理事および監事に対する報酬等の内容は、以下のとおり。
理事 14人 3,700万円
監事 2人 

(注)
1.上記人数には、当期中に退任した常勤理事1人、非常勤理事3人が含まれる。
2.上記のうち、非常勤の理事10人、監事2人には、報酬は支払っていない。

終わり

目次に戻る