NHK厚生文化事業団 平成21年度事業報告書

目次

はじめに

平成21年度は、日本経済の回復が遅れるなかで、寄付金に大きく依存する事業団にとって、大変厳しい運営を余儀なくされる一年でした。
しかし、NHKグループ唯一の社会福祉法人として、その社会的責任を果たすために、継続事業を堅持し、効率的な運営やチャリティー事業の収益増に努める一方、放送と連携しながら今日的課題に応える新しい事業を展開することにも挑戦しました。
また、事業団の創立50周年を控えて、その記念事業第一弾を21年度内にスタートさせ、半世紀にわたる事業団の歴史に新しい一歩を踏み出すことが出来ました。
NHKグループに大きく支えられながら、事業団としての使命を十分に果たし、未来につながる事業を開拓した実りある一年となりました。

継続事業については、発達障害の子供たちの支援を強化するとともに、認知症フォーラムを全国各地で開催するなど、各種支援事業のさらなる充実を図りました。
新規事業については、統合失調症への取り組みをさらに進めたほか、「思春期の心の病」という今日的課題に多角的にアプローチし、新しい分野を開拓しました。
50周年記念事業の第一弾として、3月にNHKホールで開催した「こころコンサート」は、世界的な指揮者小林研一郎氏の下、障害のある人もない人も心をひとつにして奏でた素晴らしい演奏会となり、観客3,000人の感動を呼びました。関連番組の放送にも大きな反響が寄せられ、事業団初めての試みは、「ともに生きる社会」への確かな一歩となりました。

発達障害児・者への支援事業

「特別支援教育」が本格的に実施される中、LD(学習障害)ADHD(注意欠陥多動性障害)などの発達障害に関するフォーラムを全国14か所で実施し、参加者は6,200人に上りました。さらに、発達障害のある子どもの相談会や療育キャンプを行いました。

認知症に関する啓発事業

大きな社会問題である認知症については、全国20か所でフォーラムを実施し、1万人を上回る参加者がありました。NHKの地域放送でその内容を放送したほか、認知症についての冊子を希望者に配布するなど、多角的な情報提供につとめました。

地域福祉活動への支援

障害者や高齢者の施設・団体に福祉相撲号や福祉機器を贈るとともに、「わかば基金」では支援金のほか、NHKグループの協力により「リサイクルパソコン」を贈呈しました。

子どもや思春期の人たちをサポートする新しいキャンペーンの実施

新しく冊子「思春期の心の病」を制作し、思春期の心のケアを考えるフォーラムを実施しました。また、事業団のホームページに、子どもの健やかな成長を支援している福祉現場のリポートを掲載し、NHKの「子どもサポートネット」キャンペーンとの連携を図りました。

NHK厚生文化事業団50周年を記念した事業の実施

障害のある演奏家が31人参加したオーケストラによる、50周年記念コンサートを実施しました。また、厚生文化事業団の50年におよぶ福祉の歩みを綴る記念誌の編纂に着手しました。

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1.障害者福祉事業

(1)こどもの発達相談会および療育キャンプ

大阪、名古屋、福岡において、ことばや発達の遅れた子どもとその親のための定例相談会を開くとともに、大阪、広島ではLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)など発達障害児を対象にした相談会を行った。また名古屋では、親と子の療育キャンプ「やまびこキャンプ」を実施した。

定例相談会

大阪、名古屋、福岡で12回実施した。知的や言語の発達のおくれ、自閉症、重複障害などの子どもの相談が多かった。

LD教育相談会

大阪では、平成12年度からLD、ADHD、高機能自閉症児などを対象にした「LD教育相談会」を行っている。また20年度に続き広島市でも相談会を開催した。

親と子の療育キャンプ

第26回「やまびこキャンプ」を愛知県旭高原で実施した。愛知教育大学とそのOBの人たちの協力により、発達障害のある子どもたち16人が、自然の中で集団生活を体験した。家族やボランティアなども81人参加した。 

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(2)肢体不自由児・者の療育活動

肢体不自由児・者の療育キャンプを、支援団体との共催・協力により、各地で実施した。夏季、冬季の野外活動を通じて、参加者の自立と社会参加を促進し、あわせて交流の輪を広げた。

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(3)NHKハートフォーラム(障害者福祉・発達障害福祉)

自閉症やLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などについてNHKの地域放送局や「親の会」などと共催で、NHKハートフォーラムを14回開催した。
また20年度に引き続き、統合失調症に関するフォーラムを3回実施した。

発達障害フォーラム

発達障害児・者の教育支援や就労の問題をとりあげたフォーラムを14回開催した。保護者だけでなく、「特別支援教育」を推進する教員など教育関係者も多数参加した。

統合失調症フォーラム

フォーラムは、専門家による解説を軸に、統合失調症の人を取材したビデオの上映と、参加者から事前に募った質問などを組み合わせて構成した。統合失調症については、こうした大がかりで無料の催しはほとんど無いため、20年度に引き続き、各会場とも当事者や家族などが多数参加した。「とても分かりやすかった」「前途に希望が持てた」などの感想が寄せられた。

そのほかのNHKハートフォーラム(障害者福祉)

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(4)障害者スポーツイベントの開催

知的障害者のスポーツ大会を東京で実施したほか、全国5か所で障害のある人もない人も一緒になって障害者スポーツを楽しむイベント「ハートスポーツフェスタ」を実施した。

第43回スポーツの集い

重度の障害者が参加できる全国でも数少ないスポーツ大会として、東京都障害者スポーツ協会と協力して開催した。参加者は100メートル走、大玉ころがし、綱引きなどを楽しんだ。

NHKハートスポーツフェスタ

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(5)そのほかの福祉イベントの開催

第4回NHK福岡ハートパーク

福岡の大濠公園で開催した「NHK福岡ハートパーク」では、障害のある人が描いた絵120枚をフラッグにし、街路灯に飾って展示した。

知的障害者をトラブルから守るための研修会

名古屋で、福祉施設の職員を対象に、知的障害者をトラブルから守るための研修会を実施した。事業団が制作した福祉ビデオを使いながら専門家が指導するもので、3回開催し39人が参加した。

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(6)第44回NHK障害福祉賞

障害のある人の体験記録や、福祉関係者、家族などの記録を広く社会に伝える「障害福祉賞」には、第1部門を中心に455編の応募があった。選考の結果、次の実践記録が入選した。

第1部門 障害のある本人の部門
第2部門 障害のある人とともに歩んでいる人の部門

応募数 455編(第1部門:309編、第2部門:146編)

入選作

入選作品は「第44回障害福祉賞入選作品集」として刷成し、広く頒布したほか、朗読による音声版(テープ、デジタル録音)、点字版の入選集を作成し、全国の点字図書館や視覚障害の応募者などに提供した。贈呈式は12月7日にNHK放送センターで行った。
また、入選作品が「ハートをつなごう」(平成21年12月7日?8日教育テレビ)で紹介されたほか、最優秀の山田 俊之さんが 12月26日の「ラジオ深夜便」に出演した。

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(7)第14回NHKハート展

平成6年度以来、14回目を迎えた「NHKハート展」には、障害のある人が綴った詩5,469編が寄せられた。その中から選ばれた50編の詩と、その詩をもとに各界の著名人が制作したアート作品を組み合わせて展示した。
それぞれの想いが融合した50対の作品は、平成21年3月3日から8日まで開かれた日本橋三越での東京展をはじめ、大阪市、静岡市、長野市など11か所の巡回展で紹介された。入場者は84,156人に上った。
また、22年度に巡回展を行う第15回NHKハート展には、6,128編の詩が寄せられた。巡回展は、平成22年3月3日から8日までの日本橋三越での東京展をはじめとして、年度内に全国11会場で開催する予定。

第14回NHKハート展入場者数(11会場)

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2.高齢者福祉事業

(1)NHK福祉ネットワーク「公開 すこやか長寿」

NHK教育テレビ「福祉ネットワーク 公開すこやか長寿」の番組収録(毎月第3木曜放送)を兼ねて、ゲストによる高齢者の健康や生き方に役立つ講演を内容としたイベントを、全国10か所で開催した。ゲストは、ヨネスケさん、山田邦子さん。

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(2)認知症フォーラム、NHKハートフォーラム(認知症)

NHKの放送と連動させながら、認知症フォーラムやNHKハートフォーラムを、20年度より7か所多い全国20会場で開催した。のべ1万人を超す人々が参加した。認知症の人の家族だけでなく、介護施設の職員をはじめ、医療・介護従事者の参加も多く、半数前後を占めた。
会場でのアンケートには、「不安でいっぱいでしたが、明るい見通しを持てました」「明日から介護に笑顔と勇気を持って臨めます」との言葉が、多数つづられている。

認知症フォーラム「あきらめない--最新医療と社会の支え--」

患者数205万人と言われる認知症は、ここ数年治療や介護の面で目覚しい進歩がある。事業団とNHK、読売新聞が主催したフォーラムでは、認知症になっても安心して暮らすための最新情報を紹介した。また、地域放送や紙面、ウェブサイトなどとも連動したクロスメディア展開で啓発につとめた。

NHKでの放送展開

認知症フォーラム「寄りそう心 支える社会」

医療・介護の最新情報とともに、認知症の人と家族を支援する地域の取り組みを紹介した。フォーラムを開催した地元での先進的な事例を取り上げることで、さらに地域支援の輪が広がるように後押しした。NHKとの共催で、全国5か所で行った。

NHKでの放送展開

そのほかの認知症フォーラム

画像診断の技術が急速に進歩してきている現状を紹介しながら、「早期診断・早期治療」の重要性を訴えるフォーラムを行った。

NHKでの放送展開

NHKハートフォーラム(認知症)

フォーラムを開催する地元での身近な取り組みなどを例にして、医療・介護の望ましいあり方や、地域での支援体制の課題について話し合った。

認知症に関する小冊子の配布

認知症に対する正しい知識を持ってもらうために、小冊子「もの忘れが気になるあなたへ」 (19年度作成)を3万部増刷して、フォーラムの参加者や希望者に配布した。発行部数は合計15万部となった。
また家族向けの小冊子「家族が認知症と診断されたあなたへ?おすすめ介護術」(20年度作成)を3万分増刷し、発行部数は合計10万部となった。

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(3)NHKハートフォーラム(高齢者福祉)、慰問活動

成年後見制度についてのフォーラム

成年後見制度の利用の仕方を分かりやすく伝え、そのあり方を考えるフォーラムを開催した。

施設への慰問活動

東海地方の病院や特別養護老人ホーム5か所で、津軽三味線と民謡による慰問演奏会を行った。参加者は合計526人。

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(4)ラジオ公開生放送「鎌田 實 いのちの対話」の実施

地域医療の第一人者である長野県諏訪中央病院の鎌田實医師をホスト役に、毎回ゲストを迎えて、「いのち」について参加者とともに考える公開生放送(ラジオ第1)のイベント。21年度は4回実施し、多くの聴取者が参加した。

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(5)NHK銀の雫文芸賞2009

高齢社会をどう生きるかをテーマにした小説を一般から募集した。「雫石とみ文芸賞基金」によって20年間実施してきた「銀の雫文芸賞」の成果を継承するために、NHKの共催を得て、20年度から行っている。
作品の選考には、作家の北原亞以子さん、出久根達郎さん、脚本家の竹山洋さんがあたった。過去最高の1,107編の応募があり、次の3編が入選した。
入選作品は、「NHK銀の雫文芸賞2009作品集」として刷成し、広く頒布した。

最優秀の松並百合愛さんは13歳の中学2年生で、これまでで最も若い受賞者となった。作品の「手の記憶」はラジオドラマ化され、11月21日「FMシアター」で放送された。

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(6)NHK介護百人一首

日々の介護の様子や思いなどを詠んだ短歌を募集し、珠玉の作品を「介護百人一首」として選出し、作品集にまとめた。
4回目の平成21年度は、7,651首の短歌が集まった。
入選作品は教育テレビ「福祉ネットワーク」で紹介されたほか、パネルにして各地の放送局など14か所で展示される。

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3.子どもや思春期の人たちの福祉課題など、新しく取り組んだ事業

子どもや思春期を迎えた世代がかかえるさまざまな課題をサポートするため、フォーラムのほかホームページや冊子で多角的に情報発信した。NHKの公共放送キャンペーン「子どもサポートネット」の番組やNHKのサイトとも連携を図りつつ実施した。

(1)「思春期のこころの病」のキャンペーン展開

ハンドブック「思春期の心の病」を新しく発行するのに合わせて、フォーラムを開くなど、思春期を迎えた人たちの精神疾患の問題についてキャンペーンを展開した。

NHKハートフォーラム「思春期の"こころ"と"病"を知る」

思春期特有の一般的な悩みと精神疾患との見分け方や、対応の仕方などを知る、NHKハートフォーラムを実施した。思春期の子どもを持つ親や、教師、養護教諭が数多く参加した。

ハンドブック「思春期のこころの病?"悩み"と"病"の見分け方?」の制作

思春期特有の精神疾患をできるだけ早く発見し、その対応について啓発するため、冊子を11万部制作した(監修:青木 省三 川崎医科大学精神科学教室教授)。
対象はおもに学校関係者や親で、全国の高等学校や特別支援学校およそ5,900校に5万部送ったほか、NHKのお知らせなどで冊子を知った希望者に2万部、合わせて7万部を送付した。
「生徒たちの直面する問題がコンパクトに整理されている。全教師に持たせて活用させたい」「子どもと接する上でのヒントが盛り込まれている」などの反響が寄せられている。

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(2)「子どもサポートネット」キャンペーン

NHKの公共放送キャンペーン「子どもサポートネット」と連携させ、ホームページ上に、子どもたちの成長をサポートする福祉現場の取り組みをリポートするコーナーを新設した。
また、NHKの地域放送局との共催で、子どもをめぐる今日的な課題について考えるNHKハートフォーラムを実施した。

厚生文化事業団「子どもサポートネット」の新設

ホームページに開設したコーナーでは、障害児に運動や音楽を指導するグループ、子育てに悩む親を支援するグループ、子どもの虐待防止に取り組むネットワーク、療育キャンプを実施する団体など20件の事例を取材し、写真をまじえて詳しく紹介した。関係者からは、「地域のNPOのささやかだが地道な取り組みに光をあて、活動の後押しをするもの」と、感謝や期待の声が寄せられている。

NHKハートフォーラム(子どもの福祉)

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(3)福祉の仕事に興味を持つ若い人に向けたフォーラム

名古屋で、福祉の仕事に興味を持っている学生たちを対象に、愛知県社会福祉協議会、NHK名古屋放送局、中日新聞社との共催でフォーラムを開催した。

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4.ボランティア活動促進事業

NHKからの受託事業である「NHKボランティアネット」は、ボランティア情報を求める人たちと、ボランティアに取り組むNPOなどの関係者の双方から、インターネット上の信頼できる媒体として活用されている。
また、ボランティア活動の魅力と課題を紹介するために、NHKの地域放送局や関係団体などと共催してNHKハートフォーラムを開催した。

(1)NHKボランティアネットの運用

「NHKボランティアネット」は、阪神・淡路大震災によりボランティアの機運が高まった平成7年に発足し、以来15年間にわたってボランティアの啓発と関係団体の支援に取り組んできている。

21年度は、今年1月、阪神淡路大震災から15年目を迎えて、「あの時から始まった?私のボランティア元年?」のコーナーを開設した。大震災時のボランティア体験を機に、その後も精力的な活動を続け、現在ボランティアグループの牽引役となっているNPOのリーダーや、歌手の小室等さん、桑名正博さんなど、著名人10人のインタビュー記事を掲載した。また投稿も広く募集し、大震災での体験を原点にして今も活動を続けている方々18人の手記を掲載した。反響も大きく、「ボランティアネット」のアクセス数は、「私のボランティア元年」のコーナーを中心にして、月間で25万ページビューに上った。

常設コーナーの「各地のボランティア情報」では、ボランティアを募る全国各地の団体からの依頼に応えて、常時200件を超える募集情報や活動案内などを掲載した。

災害支援では、新型インフルエンザの関連情報、7月の中国地方での豪雨・水害、10月の台風などについて、情報の迅速な提供に努めた。台風18号が上陸した10月7日には、アクセス数は1日で5万ページビューを記録し、「緊急災害時のボラネット」との評価が定着していることを示した。また、1月のハイチ地震災害、2月のチリ地震・津波についても関連情報を掲載する一方で、義援金募集のコーナーも特設し情報を発信した。

21年度の「ボランティアネット」のアクセス数は、1日平均1万ページビュー。年間では、316万ページビューを数えている。

22年4月からは、大幅なリニューアルに取り組んでいる。
「CSR・企業の社会的責任」が注目される今、ボランティア活動に力を入れることを検討している企業も少なくない。また、大量退職をした団塊の世代をはじめ、ボランティアを始めようと考えている人々も数多い。
こうしたニーズに的確に応えるために、「一歩前へ!会社と社員の社会貢献」を新設し、企業人によるボランティア活動の様子やノウハウをリポートしている。併せて、「ボラ仲間の活動リポート」を設けて、福祉・教育・国際交流など多様な活動についての取材記事を掲載するとともに、全国の団体から活動報告を幅広く募集している。
ページの作成に当たっては、新しい簡易入力システムを導入して、掲載内容の速やかな更新を図りながら、ページのデザインも一新して、より魅力的で、わかりやすい、役に立つボランティア情報の発信に努めていく。

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(2)NHKハートフォーラム(ボランティア)の開催

NHK地域放送局と共催して、ボランティア活動を啓発するフォーラムを2回実施した。

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5.福祉情報の提供事業

(1)福祉ライブラリー活動

「福祉ライブラリー(テープとビデオ)」は、NHKの福祉番組を複製して貸し出すもので、事業団創立以来の基幹事業の一つである。新番組や反響の大きかった番組をいち早くライブラリーに加えるなど、ラインナップも多様で、教育や福祉の現場でも活用されている。
また、聴覚障害者向けに字幕付きのビデオを作成し、全国の聴覚障害者関係施設で貸し出しを行っている。

テープライブラリー

視覚障害者向けのテープライブラリーは、文芸作品や古典の名作を朗読したNHKの番組を複製して、全国47か所の委託施設で貸し出しを行っている。各地の点字図書館では、デジタル図書での利用が多くなっているため、平成20年度からソフト作成をテープからデジタル録音のDAISYに切り替えている。
21年度は、NHKの『ラジオ文芸館』から「雛の花」(浅田次郎)、「蝶」(宮本輝)、「この子の絵は未完成」(乙一)など8作品を、『古典講読』から「更級日記」を複製した。
貸し出し利用は、年間10,126本に上っている。

ビデオライブラリー

テレビの福祉番組「福祉ネットワーク」「きらっといきる」「ハートをつなごう」や、「きょうの健康」「ためしてガッテン!」など、視聴者から反響の大きかった番組や、福祉の学習に役立つ番組など72番組を、ライブラリーとしてVHSとDVDに複製した。また、事業団制作の福祉ビデオシリーズもライブラリーに加えた。
4月にはライブラリー目録の冊子を作成した。また新規の番組を随時ライブラリーに加えていくため、追加した作品の目録を年4回発行した。
昨年からオンライン予約システムを導入し、パソコンを使っていつでも予約ができるようにしたため、現在はオンライン予約が増えて、電話予約とほぼ同等の件数になっている。
また、貸し出しビデオを新規複製分から、これまでのVHSテープからDVDに切り替えている(過渡期として、平成22年度まではVHSでも複製している)。過去の人気の高い番組についても順次DVD化を図っていく。

年間の貸出利用は6,554本。おもな利用者は、福祉関係の大学・専門学校をはじめ、福祉の現場で働く人、障害児の親や障害者本人、介護に携わっている家族、ボランティア団体のメンバーなどである。年間の利用者数は、延べにすると、20年度よりも400人ほど増え、2,541人に上っている。
利用が最も多かったのは、事業団制作の福祉ビデオ「統合失調症の人の回復力を高める家族のコミュニケーション」だった(578人)。貸し出し当初は在庫の20セットに対し300人を超す希望があったため、急遽50セットを追加作成した。次に利用が多かったのは、「知的障害や自閉症等の障害のある人たちをトラブルから守る」であった(73人)。

聴覚障害者向け字幕ビデオライブラリー

NHKの字幕放送の拡充にあわせ、聴覚障害者向けサービスとして、平成15年度から行っている。21年度は、「福祉ネットワーク」や「きょうの健康」など5本の番組を字幕化し(通算47番組)、全国59の聴覚障害者関係施設と事業団で貸し出しを行っている。

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(2)ハンドブック「思春期のこころの病?"悩み"と"病"の見分け方?」の新たな制作

思春期特有の精神疾患の見分け方と、その対応について啓発するために、11万部制作した。対象はおもに学校関係者や親で、全国の高等学校や特別支援学校およそ5,900校に5万部を送付した。また追加送付を希望する学校や、NHKの放送によるお知らせで知った個人、NPO、行政の相談窓口などからの手に入れたいという要望にこたえ、2万部を送付した。送料は利用者担とした。
この冊子に関連し開催したNHKハートフォーラム「思春期の心の病を知る」の参加者にも無料で配布した。

なお、本事業はJKA(旧・日本自転車振興会)の補助金を得て実施した。

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(3)希望者への「認知症冊子」の配布

認知症はどんな病気か、治療法や予防法、相談窓口などをわかりやすくまとめた「もの忘れが気になるあなたへ」(19年制作、監修:小阪 憲司 横浜ほうゆう病院長)を3万部増刷した。総発行数は15万部。
また、昨年制作した「家族が認知症と診断されたあなたへ?おすすめ介護術?」(監修:須貝 佑一 認知症介護研究・研修東京センター副センター長)を3万部増刷した。認知症の介護のポイントを症状別にわかりやすくまとめたもので、総発行数は10万部。
両冊子とも、フォーラムの参加者や、希望者に無料で配布した。(送料は利用者負担)

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(4)NHKの福祉キャンペーン「NHKハートプロジェクト」との連携

NHKは「NHKハートプロジェクト」を組織して、「ともに生きる社会」をテーマに、NHKの福祉番組や福祉イベントを年間計画でキャンペーン展開している。
事業団では、これまで蓄積してきた福祉事業の経験をもとに、NHKと協力しながら、このキャンペーンを推進している。

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(5)ラジオ番組「ともに生きる・NHK厚生文化事業団だより」

ラジオ番組「ともに生きる」(日曜日 午前8時?8時30分:ラジオ第2)で毎月1回「NHK厚生文化事業団だより」が放送された。事業団が主催して行ったフォーラムや、事業団が独自に制作した福祉ビデオについて放送を通じて紹介するもので、メディアを変えた事業団の情報発信となっている。
スタジオの解説には、毎回、近畿支局の大野支局長があたっている。「知りたい具体的な情報をわかりやすく伝えてくれる」と好評である。

放送日とテーマ

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6.チャリティー事業

NHKをはじめ多くの関係団体の支援・協力を得て、以下の主催チャリティー事業を実施した。
チャリティーによる純益は、障害者福祉事業などに役立てたほか、福祉機器や車両を購入し福祉関係団体・施設へ贈呈した。
また、NHKチャリティー展の収益の一部を「NHKチャリティー展文庫」として、地元の福祉施設にDVDや書籍を贈呈している。今年度は、愛知県内の3つの特別養護老人ホームに寄贈、あわせて津軽三味線の演奏や民謡で慰問をおこなった。

(「※」印は物品などの贈呈をした催しで、詳細は、8‐(4)に記載)

(1)NHK番組公開チャリティー

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(2)事業団主催チャリティー

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7.その他の支援事業

「NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい」のほか、地震や台風など災害発生時に全国のNHKと日本赤十字社などとともに義援金の受け付けを実施した。
また、地域福祉の推進を支援する「わかば基金」での支援金やリサイクルパソコンの贈呈、チャリティー事業の益金による福祉機器の贈呈など、各種支援事業を行った。

(1)「NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい」

「平成21年度NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあい」をNHK、中央共同募金会、日本赤十字社と共催で12月1日?25日の間実施した。
11月29日に六本木ヒルズから、特別番組「あなたのやさしさを2009」を生放送し、義援金がどのように使われているかを紹介した。
また、全国の各放送局でも、11月から12月にかけて福祉キャンペーン「NHKハートプロジェクト」のイベントや放送を集中的に展開したが、「NHK歳末・海外たすけあい」をその中核事業として位置づけ、様々な方法でPRに努めた。

「歳末たすけあい」の義援金は、中央共同募金会を通じて全国の障害者の方々や、援助や介護を必要とするひとり暮らしのお年寄り、援助を必要とする子どもたち、長期療養生活をしている人や、生活が困難な世帯、災害地などに配分された。
「海外たすけあい」では、日本赤十字社が赤十字国際機関と協力し、紛争や自然災害に苦しむ人たちのために使われる。

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(2)災害義援金受け付けの実施

事業団ではNHK、日本赤十字社、共同募金会とともに、大規模な災害が起こった際には、その都度「災害たすけあい」を実施している。
平成21年度は、7月から8月にかけて発生した豪雨や台風による地域災害に対し、4件の国内災害たすけあいを実施した。また、秋以降に起った「スマトラ島沖地震」や「ハイチ地震」「チリ大地震」について海外災害たすけあいを実施した。

1.国内災害

2.海外災害

※海外災害は平成22年4月30日現在の件数・金額

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(3)第21回地域福祉を支援する「わかば基金」

あすの福祉の芽を育てる「わかば基金」は、福祉の分野で地道に活動を続けているグループを励まし、支援するために設けられたもので、今回で21回目を迎えた。
19年度から設けた「リサイクルパソコン部門」は、NHKやNHK関連団体から不要になったパソコンを寄贈してもらい、リサイクルした上で必要としている福祉団体に贈呈するもので、NHKグループの新しい社会貢献活動ともなっている。
21年度の募集では、第1部門「支援金贈呈の部」に289グループ、第2部門「リサイクルパソコンの部」に222グループ(563台)から申し込みがあった。
選考委員会を経て、17グループに総額597万円の支援金を、19グループに51台のパソコンを贈った。初回からの贈呈件数は388グループに上る。

<支援先>
【第1部門支援先】*17グループ *支援金総額:597万円

【第2部門】*19グループ *リサイクルパソコン贈呈:51台

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(4)物品などの寄贈

「福祉相撲号」の寄贈

「第43回NHK福祉大相撲」の純益により、福祉車両「福祉相撲号」を例年より1台多い10台購入した。これに日産自動車(株)からの寄贈1台を合わせて11台を障害のある人たちの療育活動や、お年寄りのデイケアなどの福祉活動を行っている施設・団体に寄贈した。初回からの寄贈台数は265台となった。

<寄贈先>

「車いす付き介護浴槽」・「障害者スポーツ用具」の寄贈

春と秋に開催した「歌謡チャリティーコンサート」の純益により、車いす付き介護浴槽と障害者スポーツ用具を購入し、福祉施設・団体へ贈呈した。

◎4月9日、西宮市で開催した「歌謡チャリティーコンサート」の純益で「車いす付き介護浴槽」を兵庫県内の3か所の高齢者福祉施設に贈呈した。

<寄贈先>

◎10月9日、札幌市で開催した「歌謡チャリティーコンサート」の純益で、「障害者スポーツ用具」を全国4つの障害者スポーツ団体に贈呈した。

<寄贈先>

チャリティー陶芸展による物品寄贈

日本陶芸倶楽部、毎日新聞東京社会事業団と共催した「第42回日本陶芸倶楽部会員チャリティー作品発表展」(5月20日?25日・日本橋三越本店)による純益の一部で、福祉施設6か所に洗濯機を贈呈した。

ベトナムで奨学金を贈呈

視聴者からの寄付を受けて、平成14年から「ベトナムの子どもを支える会」(代表:小山 道夫)を通じてフエ市の学生に奨学金を贈呈しており、日本からの民間支援として現地で高く評価されている。21年度(第2期事業の4年目)は、約110人の学生に学資の給付を行った。

「別冊 NHKウイークリーステラ 大相撲特集」寄贈

NHKサービスセンター寄贈による「別冊 NHKウイークリーステラ 大相撲中継」を全国1,955か所の老人福祉施設(ケアハウス、軽費、養護)に対し、年6回、毎回3,910部を贈呈した。

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(5)催物への招待

事業団の催し物の開催時に、知的障害施設や盲学校生徒など、さまざまな障害のある人、968名を招待した。

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8.NHK厚生文化事業団50周年事業

(1)NHK厚生文化事業団50周年記念
「こころコンサート・コバケンとその仲間たちスペシャル2010」の実施

障害のある人とない人がこころをつなぎ、演奏するコンサートを開催した。
視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、知的障害、自閉症など、障害のある演奏家、31人がオーケストラに参加し、小林 研一郎氏の指揮のもと半年間の練習を重ね、3月7日にNHKホールで演奏会を開いた。
演奏曲はシベリウスの交響詩「フィンランディア」や、チャイコフスキーの序曲「1812年」など。客席には招待した障害のある人300人を含め、3,010人が集まった。
NHKの番組で、オーケストラが結成されてから本番に至るまでのドキュメンタリーやコンサートの模様が放送されたほか、新聞、福祉情報誌などでも紹介された。

NHKの放送展開

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(2)「NHK厚生文化事業団50年史」の編纂など

事業団の歩みをつづった「NHK厚生文化事業団50年史」の編纂に着手した。
また、福祉の実践記録である「NHK障害福祉賞」の45年におよぶ作品の中から、その代表作を集めた本を出版する準備作業をおこなった。(夏に発行予定)

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9.広報活動

事業団の活動を広く周知するため、事業内容を紹介する印刷物を催し物会場で配布し、福祉活動への理解と協力を求めることに努めた。また、ホームページでは、催し物の周知や活動報告などを分かりやすく伝え、「NHKボランティアネット」と合わせて、ネット時代にふさわしい広報活動に努めた。

(1)広報物の作成・配布

「NHK厚生文化事業団年報」(年1回)を発行して事業団の福祉活動への理解促進を図った。
また、事業団の業務を紹介したパンフレットの「事業団のふくし」を作成し、イベント会場での配布により周知活動を行った。
さらに、NHKの放送、ニュースによる各種事業の紹介のほか、外部に対する記事提供により、新聞・雑誌などでも活動内容が紹介された。

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(2)広報活動の強化にホームページの拡充

ネット時代をむかえ、事業団のホームページを拡充し、利用者に見やすく分かりやすい情報を提供するように努めた。
掲載内容は、事業団の催し物の予定、実施したフォーラムの報告や抄録、「NHK障害福祉賞」や「NHK銀の雫文芸賞」の入選作品、「わかば基金」で支援した団体の活動リポート「わかばなかま」、福祉ビデオライブラリーの目録や予約システムなど多岐にわたる。

21年度には新しくNHK厚生文化事業団「子どもサポートネット」のサイトを設けた。
NHKの「子どもサポートキャンペーン」の番組やサイトと連動させながら、子どもたちの成長をサポートする福祉現場の取材記事を掲載した。子育てや障害者を支援する20ほどのグループを紹介した。

さらに、ホームページの利用者からメールで寄せられた、さまざまな問い合わせに即応するよう努めている。

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10.共催、後援、協賛した事業

(1)共催事業

上方落語の会

4月3日、5月21日、6月12日、7月9日、9月3日、10月8日、11月12日、12月2日、(平成22年)1月14日、2月3日、3月11日(計11回) NHK大阪ホール 入場者計 6,620名 *NHK大阪放送局と共催

東西浪曲大会

8月29日 NHK大阪ホール 入場者 1,024名 *NHK大阪放送局と共催

第55回全国里親大会

10月9日 東京厚生労働省講堂 参加者 850名 *厚生労働省、東京都、全国里親会と共催

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(2)後援、協賛したもの

福祉、教育、医療団体などが行う研修、啓発事業、また美術、スポーツ団体などが福祉目的で開催するチャリティー事業に積極的に協力し、本部・支局併せて138の事業を後援、協賛した。

チャリティー催し物(37件)

「国展」「春陽展」「二科展」「ホテルオークラアートコレクション展」「創作手工芸展」「アザミ革工芸展」「チアリーディング日本選手権大会」「KEIRINグランプリ2009」「All Age In 大阪」「東海地区相撲甚句会御殿場大会」「チャリティー全国大陶器市会」「創作手工芸梅支部展」などのチャリティー催しを後援し、その益金から事業団へ寄付をいただいた。

福祉関連の催し(101件)

「日本車椅子バスケットボール選手権大会」「肢体不自由児者の美術展」「点字ビッグイベント」「メンタルヘルスのつどい」「赤十字シンポジウム2009」「日本ダウン症協会全国大会in大阪」「全国視覚障害者囲碁大会」「ボランティア・市民活動の集い」「日本高齢者虐待防止学科会」「北九州市精神障害者家族連合会」などを後援、協賛した。

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11.寄付金

当事業団への寄付金には二種類ある。個人や団体からのご寄付である一般寄付金と、当団が主催、後援、協賛したチャリティー事業からのご寄付であるチャリティー寄付金である。
21年度は、

に上った。

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12.賛助会員・維持会員

賛助会員は、一般法人に広く協力を求め、本年度は、13団体16口の新規入会、および1団体1口の増額があったが、業績不振等により、減額5団体・10口、退会23団体・40口の申し出があり、合わせて174団体から2,310万円の支援を受けた。
また維持会員については、NHKおよびNHK関連団体役職員、NHK旧友会員など6,382名に上る方々の協力を得て、その額は1,101万9,200円に達した。

〔特別賛助会員〕 〔賛助会員〕 (平成22年3月31日現在)

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11.役員

(1)役員体制 (平成22年3月31日現在)

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(2)理事および監事に支払った報酬等の額

当該事業年度における当事業団の理事および監事に対する報酬等の内容は、以下のとおり。
理事 11名 2,800万円
監事 2名 

(注)1.上記人数には、当期中に退任した非常勤理事1名が含まれる。
2.上記のうち、非常勤の理事9名、監事2名には、報酬は支払っていない。

終わり

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