『私らしく生きたい』
〜受賞のその後〜
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原 節子 さん 1971年生まれ、アルバイト、京都府在住
知的障害
25歳の時に第31回(1996年)佳作受賞
原 節子さんのその後のあゆみ
『私らしく生きたい』
7年間の結婚生活
私の障害は、知的障害で、知的能力に障害があり、何らかの支援が必要であるとされている障害で、18歳までにあらわれるとされている障害です。
私の場合は軽度ですが、原因は不明です。
1995年に結婚して、2002年迄、結婚生活をしていましたが、お互いの歯車が合わず離婚しましたが、2009年まで、主人と一緒に暮らしていました。その間に、就職活動をしていましたが、障害というハンデのある私に、就職は難しく、なかなか決まらずにいましたが、ハローワーク主催の合同面接会があり、「京都大学医学部付属病院」に、契約社員として就職が決まりました。清掃職員として、5年間勤務しましたが、途中で統合失調症を発症してしまってから、精神的、肉体的に、体調を崩してしまい、実家で療養することにしました。
実家で、暫くの間、仕事を休んで療養した甲斐あって、仕事に復帰するまでに回復をしました。
職場の配慮もあり、仕事を続ける事ができたのですが、今度は、2012年に母が交通事故に遭い、帰らぬ人になってしまいました。
それから暫く実家にいたのですが、父と、兄の喧嘩が、絶えなくなり、私の力ではどうすることもできなくなり、止めることができなかったのです。
一人暮らしと再就職への挑戦
その頃から、私は、ひとつの決意をし始めていました。それは、母の三回忌が終わったら、一人暮らしをしようと思い始めていました。
一人暮らしの準備に先立ち、支援者の方にも手伝ってもらい、事務手続きから、家探し、家具、照明器具選びまでして頂き、やっと、一人暮らしを始めることができました。
その後、1年間は、「京都大学医学部付属病院」で、勤務したのですが、契約切れになり、退職しました。
再び就職活動を始めて、半年位で、やっと、就職が決まりました。今の職場の「社会福祉法人 洛東園」福祉施設に、決まり入社しました。以前と同じく、清掃職員として、働く事になりました。「洛東園」は、昭和27年に設立された高齢者の生活の場です。
京都東山区の本山東福寺境内にあり、緑に囲まれた、とても静かな環境にあります。
「洛東園」の敷地内には、隣接された3つの施設があります。
◎養護老人施設
◎特別養護老人施設
◎デイサービスセンター
その3つの施設の清掃をしており、利用者のお部屋や、施設の外回りの掃除をしています。清掃職は、障害者4人で、作業をしています。年齢も障害も、それぞれに違うけど、楽しく仕事をしています。
利用者の方々から、「いつもありがとう」とか「ごくろうさま」と心温まる言葉をいただくと、すごく嬉しく元気が出ます。職員の方々には、障害者としてではなく、健常者と同じ目線で見ていただいて、声をかけてくれたり、はげましてくださいます。
入社後は、明るい職場で働けるので通勤電車も苦にならず、誰とでも、普通に挨拶ができて、コミュニケーションがとれる自分がいました。
新たな病気と向き合う
「洛東園」で働き始めて、約1年後に、新たな病と向き合うことになりました。車の免許更新のため、眼鏡が必要となり、眼科に受診に行った時に、眼圧検査を受けたところ、その数値が高いと、告げられました。
その時は、目が疲れているのだろうとしか思っていなかったのですが、2回目の受診の時に告げられたのは、(緑内障)と診断されました。何の症状も無かっただけに、これには、ショックを隠せませんでした。医師によると、目の病気の中でも、現在のところ、治りにくい眼病の一つで、眼圧が高く視神経が障害され、視野が欠けてきて、一度、障害を受けた視神経は、再生する事が無い為、緑内障は失明する危険を伴う目の病気で、一生、この病と付き合っていくしかないようです。私が、思ったことは、病と向き合って、これ以上に悪くならないようにしようと考えました。
新たな出会い 将来へ向けて
「洛東園」に入り、この4月で3年目になりました。前夫と離婚してから、約10年が過ぎて、私に新しい出会いが、有りました。一人の男性と知り合いになり、付き合うことになりました。
健常者の方で、年上の方です。彼は、私のことを、障害者ではなく健常者の一般女性として好きになってくれました。勿論、私には、離婚歴もあり、病を抱えていることも知っています。それでも、彼は付き合ってくれて、将来のことも考えてくれており、「結婚したい」と言ってくれています。私も、結婚したいと思っています。お互い結婚を望んでおり、結婚を前提でお付き合いを、しています。
これからも、仕事と、プライベート、そして障害と向き合い受け入れて、頑張りたいと思います。
福祉賞50年委員からのメッセージ
短時間で障害を受け入れたことに驚かされました。さらに、気持ちの切り替えと次への行動の速さにも。ご自分の進路や、仕事を選ぶ際にもしっかり前を向いて、自分自身の判断で動いている。その後、残念ながら統合失調症や緑内障という新たな障がいが増えてしまいましたが、それらにも淡々と対応し、今の職場で充実した日を送られている。過去、激しいいじめに遭っても屈折せずに、他者への思いやりにあふれている原さんだからこそ、新たな出会いを得て、愛し愛されるのでしょう。幸多かれと祈ります。
鈴木 ひとみ(ユニバーサルデザイン啓発講師)